時事ネタ3連発: 先進美術館の後進性について/日大アメフト問題のストレス回避/栗城史多と記号消費社会

人生の消耗

久しぶりの時事ネタ3連発は、先進美術館の後進性について、日大アメフト問題のストレス回避、栗城史多と記号消費社会という三つのテーマで書いてみる。最近思うのは次から次へと暴風雨のように襲ってくるニュースの山にいちいち付き合っていたら、それらを凌いでいるだけで人生が終わってしまうということ。なのでできるだけ客観的な情報を集め、自分なりの見解を手短にまとめた後は、もうそのニュースについては追わないというような切断ができるかどうかは割と重要なスキルである。自分の人生とは本来無関係な事柄について接続過多になってしまうと疲れるだけでなく、他人の人生を生きることと変わらなくなってしまう。その結果自分の本当にやりたいこと、やるべき仕事に集中する時間が減少してしまっては本末転倒ということになる。そんなことを念頭に置きながら、それぞれの話題について簡潔に思うところをまとめてみた。

先進美術館の後進性について

先進美術館 (リーティング・ミュージアム) はこの国の美術に対する考え方の後進性を象徴した提案である。日本のアートマーケットは脆弱であるということは過去にも散々言われてきたことだし、現在も変わらない事実だ。ただしこの問題はお金の問題ではなく、教育の問題であるということがこの案の提案者には理解されていないように思う。もしくはそんなことは百も承知であるが、刹那的な利権さえ握れれば文化など滅びても構わないというような資本主義の帰結を体現しようとしているのかもしれず、どちらにせよそれは関わる全ての人にとって不幸なことだ。先進美術館の構想を一言で言うならば、美術館という価値保存、研究、展示のための場をコマーシャル・ギャラリーに変貌させ、マッチポンプ商法のように一部の既得権益者が儲けようという構想のこと。この構想が実現するということは、要するに文化が経済に決定的に敗北するということでもある。その結果海外に流出した作品はもう戻らないだろうし、先進美術館のキュレーターは独裁者のような権力を持つことになる。この構想を考えた人間はアート・バーゼル香港などを見学する前に一度『ガチョウと黄金の卵』を読んだ方が良いだろうが、そのような教養が共有される前にアーティスト = ガチョウが刈り尽くされてしまう可能性もある。まずアートは何のためにあるのか、美術館は何のためにあるのか、それに関わる人々の役割は何なのかという根本に立ち戻る以外に解決策はないが、そのために残された時間は少ない。

日大アメフト問題のストレス回避

日大アメフト問題に関しては日本全体の病を象徴していると思うが、流石に報道が過熱し過ぎている。日本人全体がアメリカンフットボールのことについて関わる必要はないし、日大の理事会、監督、コーチなどに怒りを感じ続ける必要もない。震災などが起きた際にその映像を見続けるだけもPTSDになってしまう可能性があることは一部で知られているが、今回の報道ではそこまでは至らないまでも似たような現象が多かれ少なかれ起きているはず。人間の潜在意識は物理と情報の境界線を意識しないので、そこに対して感情を刺激し、ストレスの溜まるような情報を流し続けるとメンタルに悪影響を及ぼすことは明らかだ。これは食生活と非常に良く似ていて、例えば普段から栄養の少ないジャンクフードを食べ続けていると生活習慣病になりやすいのと同じく、普段からノイズの多い情報を摂取し続けていると知らない間に潜在的なストレスが溜まり、それは最終的には物理的な身体にも悪影響を及ぼす。日大アメフト問題は当然アメフトだけではなく、日大、もしくは日本全体の旧態依然としたシステムの破綻の問題であるし、そこには何層にも張り巡らされた病巣が存在していることは確かである。しかし実際に自分が関わりを持てる範囲にその解決の糸口がないのであれば、この件を反面教師とし、自分なりの人生を生きることに時間を割いた方が、結果として感情と時間を消耗して日大アメフト問題に関するテレビやネットのニュースを漁り続けるより、遙かに健全で有意義な人生を送れるように思う。

栗城史多と記号消費社会

登山家である栗城史多は現代の記号消費社会における成功を象徴したような人物だった。彼の志と実際の実力、彼のイメージと彼の実態が全く違ったものであることは様々な専門家に指摘されていることであるが、そんな事実は彼の記号的なブランドイメージの前に何の意味も成さない。人々はブランドやイメージを消費するのであって、その実態がただの石油の塊であろうが、アマチュアであろうが特に関係はなく、それが現代社会における本質である。一言で言えばその金になる状況をスポンサーが見逃すはずもなく、その限りなく乖離していく理想と実態の標高差が彼を死に追いやった。そもそも挑戦することと無謀であることとには大きな差がある。前者は積み上げがあり、後戻りもできるかもしれないが、後者は積み上げがなく、再チャレンジできる確証はない。確かに根拠のない自信は何かを成し遂げるために必要で、自信というのは根拠がないから意味があるとすら言える。それは原動力であり、推進力であり、自分を違うステージに連れて行ってくれるものだ。しかしその自信を力として現実の自分の位置を引き上げなければ意味がなく、そこで自分の位置を引き上げられないと知った人間は嘘という逃げ道に走るようになり、次第に自分を客観視する指標を失う。彼については詳しく知っているわけではないので印象論に過ぎないかもしれないが、現代の記号消費社会における一つの悲劇的な寓話として彼は語り継がれるべきかもしれない。

確定申告を終えて

確定申告を終えて

昨日は確定申告の締め切り日ということで、個人事業主として確定申告を終えてきた。そこで今回の記事では自分が行った方法について説明してみたいと思う。まず申告方法、提出方法、使用ソフトは以下の通り。

申告方法: 青色申告10万円控除
提出方法: 郵送
使用ソフト: やよいの青色申告 オンライン

以下にそれぞれについて簡単に説明していく。

申告方法について

申告方法は青色申告10万円控除を選んだ。つまり「複式簿記」ではなく「簡易簿記」での申告をしたということになる。当初は「複式簿記」の青色申告65万円控除を目指していたのだが、昨年の仮想通貨の取引などで記帳のハードルが上がってしまったこともあり、「簡易簿記」の青色申告10万円控除にシフトした。白色申告を選択しなかったのはそもそも白色申告と青色申告10万円控除ではほとんど手間は変わらず、後者の方が優遇されているという事情があった。なので実質選択を迷う余地はなかったとも言える。記帳については何度か自分でも説明会などに出向いていたので、大体のことは分かっていた。さらに「簡易簿記」であることに加え、ソフトを使用することで格段に記帳が楽になった。

提出方法について

提出方法については郵送を選択した。本当はe-Taxを選択したかったのだが、事前にTwitterでe-Taxに挑んだ猛者たちにより、そのハードルの高さが警告されていたので選択肢から外した。また直接管轄税務署に出向いて提出する方法もあったのだが、今回の場合は提出期限ぎりぎりだったので、消印が有効である郵送を選択した。また2020年以降は青色申告65万円控除の場合、e-Taxで確定申告を行うと10万円の節税効果が生まれるということで、それに該当する人の場合は今のうちに e-Taxに慣れておいた方が将来的に良いかもしれない。個人的にはe-Taxを進めるよりも、『未来型国家エストニアの挑戦: 電子政府がひらく世界』を読んでという記事で書いたエストニアのように、所得を全て国に知られても良いので、納税額を全て計算して後は納税するだけという制度に早くなってほしい。

使用ソフトについて

使用ソフトはやよいの青色申告 オンラインを選択した。これに関しては他のソフトでも良かったのだが、1年間無料体験だったことと、定番ソフトであるので一度試してみたかったという理由による。実際に使用してみた印象としては、初心者でも使いやすく、流れに沿っていけばいつの間にか書類が完成しているという感じだった。特にこれといった欠点も見当たらなかったので、来年度以降も継続して使用してみようと思っている。

改善点

最後に今回の確定申告の改善点をまとめておく。

・締め切りぎりぎりにまとめようとせず、日々記帳を習慣付けること。

・源泉徴収票は即座にもらっておくこと。

事務処理をコツコツやるのは苦手なので、どうしても記帳などは後回しになり、最後の最後にまとめてやって苦しむことになる。しかし特に青色申告65万円控除を目指す場合などは最後にまとめてやるのは不可能なので、記帳は日々の習慣にするしかない。また源泉徴収票の発行は本来相手の義務なのだが、自動的に発行してくれるような場所はむしろ少ない。なので確定申告ぎりぎりではなく事前に余裕を持って問い合わせておくことが重要。今回は幾つかの源泉徴収票に関しては回収できず、納税額が増えたとしても諦めることにした。また来年は海外に行くかもしれず、その場合確定申告がどうなるかなど調べなくてはならないことも多い。ただ今回ぎりぎりだったとはいえ、税理士に頼らずに1人で確定申告を済ませられたことは個人事業主として一つの達成であった。

時事ネタ3連発: 岡崎体育のファンクラブシステム炎上事件/Zaifのビットコイン0円騒動/ギブソンの経営危機

時事ネタ3連発のバイオリズム

無意識的に大体2ヶ月間隔になっている時事ネタ3連発を久しぶりに書いてみた。本来ならニュース関連の記事は週1、もしくは月1で定期的に書いていきたいところなのだが、いつも大抵忘れた頃に書くとこの周期になっているので、自分の中のバイオリズムが勝手に生まれている可能性がある。自分としては国内だけではなく、海外のニュースも含めて毎日取得し、定期的に重要と思われる話題を取り上げるということは習慣化していきたいとは常々思っている。そもそも習慣化するためには定期的なアウトプットの方法を決め、そこから逆算的にインプットを促すのが一番効率的なので、ニュースに関してはブログだけではなく、何かしらの媒体のコーナー的な立ち位置として組み込むのが良いのかもしれない。それに関しては今後の課題として考えてみることにする。ちなみに今回取り上げた時事ネタに関しては直近にあった出来事というよりは、今月あった出来事をまとめている感じになっており、速報性を重視しているわけではないのであしからず。

岡崎体育のファンクラブシステム炎上事件

炎上事件の概要

まずは岡崎体育のファンクラブシステム炎上事件について。音楽好きなら岡崎体育は知っているはずだし、今回の件に関しても多少の知識はあると思うので、手短に概要をまとめる。今月の初めに岡崎体育が自身のオフィシャルファンクラブである「Wallets」に、「bitfan」というファンサービスを提供するサービスを導入した。そこで問題になったのが、ファンのアクションに応じて独自のアルゴリズムに基づいたポイントを付与し、その合計数によってランキングを付け、そのランキングに沿った優遇サービスが受けられるというもの。このシステム自体はフリーミアムのシステムをさらに細分化したものであり、海外では特に目新しいシステムではなく、日本でも実質似たようなサービスになっている場合は多々見受けられる。

何が問題だったのか?
エモさの設計ミス

そこで今回の件に関しての問題を端的に言えば、日本人特有のエモさの設計ミスが問題なのだと考えられる。システムの設計に関してはCDという媒体が売れず、ストリーミングサービスやライブなどの体験から売り上げを回収しなければならない現代のミュージシャンにとって、ファンクラブのようなパトロンサービスに、フリーミアム的な考え方を導入するというのはむしろ自然かつ必然の流れだろう。ただ問題はそれをどうやって導入するかと言う問題で、やっていることは正しくても、やり方が日本人の流儀に沿わないならば否定されるという無間地獄がまた繰り返されてしまったということだ。

日本人特有のマインドセット

岡崎体育はエモさの設計がむしろ得意なタイプのミュージシャンである。当初予定されていた「ワニ革」、「サメ革」、「ヒツジ革」、「牛革」、「合皮」、「塩ビ」というランク分けも、岡崎体育ならではの世界観とエモさを絶妙に刺激されるようなネーミングセンスで、むしろランク分けの上下関係を余り意識させないような工夫がされていたと言える。しかし個人に対するランキング付けというのは、受験勉強と偏差値教育による価値観を埋め付けられている日本人にとって、かなりセンシティブなトピックであり、ある種のタブーに触れていることは間違いがない。そこに対してさらに日本人の拝金主義的な側面、物ではない情報、サービスにお金を払うことへの拒否感、平等にサービスを受けられないことに対する拒絶反応が絶妙にブレンドされた結果、今回の炎上事件に発展してしまったことと思われる。要するにランキングやお金を崇拝し、サービスは基本無料で平等に受けられるものという日本人特有のマインドセットの裏返しが、今回の炎上事件の背景にあるということだ。

日本人のミュージシャンの生存戦略

ミュージシャンにとっては、CDを聴ける環境すら持っていない人々が増加している現代において、CDで売り上げを確保するというのは既に神話に近い話になっている。また近年伸びているストリーミングはプラットフォームによる売り上げの徴収があるし、ライブでの収入も安定したものになっているとは言えない。そこで従来の音楽家的なパトロンのシステムがテクノロジーにより、フリーミアム的な考え方を付随させつつ復活するのは自然の流れだろう。それは投げ銭であったり、定額支援サービスであったり、クラウドファンディングなどのシステムを含めた上での話だ。よって日本人のミュージシャンは生存戦略として海外の人を主なターゲットとしてやっていくのか、もしくは日本人に対してエモさの設計を完璧に近い状態にした上でターゲットとしてやっていくのかの選択を迫られる。基本的には日本人のマインドセットはそう簡単に変わらないので、そこに関しては確実に計算に入れて動く必要があるだろう。現代美術や現代音楽に関しては日本にマーケットすらほとんど存在しないという意味で、多かれ少なかれ海外を相手にせざるを得ない必然性があるが、通常の音楽に関してはかろうじて日本に特殊なマーケットが存在しているという側面があり、それが幸なのか不幸なのかは今のところ分からないが、今後も日本のミュージシャンは状況に対して臨機応変に対応していく必要があると言える。

Zaifのビットコイン0円騒動

騒動の概要

次はZaifのビットコイン0円騒動について。騒動の経緯については以下で説明されている。

16日に発生した異常値の表示に関するお詫びとご報告

重要な点についての概要を簡単にまとめると以下のようになる。

・仮想通貨取引所であるZaifの簡単売買でバグがあり、一時期仮想通貨が0円で売買できる状態になっていた。
・7人の顧客が0円で仮想通貨を購入し、そのうちの一部の顧客が売り注文に出し、取引において異常値が表示されていた。

どれだけの異常値が表示されていたかというと、発行総数が2100万BTCであるBTCに対し、顧客の一人は存在しないはずの21億BTCを無料で購入し、そのうちの20億BTCを売りに出すというコント的な異常値が表示されていた。

ノミ行為の是非

これに対してはバグの問題を度々生じさせている取引所の問題もあるが、それ以上にノミ行為が行われていたことが問題である。仮想通貨取引所におけるノミ行為とは、顧客から売買の注文が入った際に実際に現物取引を行わずに、顧客同士の注文で相殺するなどの行為を指す。金融取引におけるノミ行為に関しては日本では条件を満たせば合法であり、FX業者でも行われている行為である。しかし取引所と顧客のパワーバランスを崩す可能性が著しく高く、投資家保護の観点からは推奨される行為ではない。そもそも今回の件については20億BTCを指し値で売り出し、注文キャンセルをしたので影響が少なかったと言える。しかし仮に成行で同額を売り出していたとしたら、仮想通貨市場が一気に崩壊するほどの大事件の引き金になっていた可能性もある。

仮想通貨の現状と将来の見通しについて
スケーラビリティ問題

仮想通貨に関しては今年に入って相場を読むことが以前にも増して難しい状況になっているのと同時に、技術的にもブロックチェーンの限界が見えてきてしまったように感じる。そもそも先程のように何故ノミ行為が仮想通貨取引所で行われるかを考えてみると、ブロックチェーンのシステムにおけるスケーラビリティ問題が解決できないからという理由が一因として挙げられる。その問題と関連して送金手数料だけであり得ないほどの料金を支払う必要がある現状は、当初の銀行と比較した際の送金手数料軽減の理想とはほど遠い状況にある。様々な遅延の問題を考えても、仮想通貨取引所が実際にブロックチェーンに取引内容をリアルタイムで書き込まない、もしくは顧客同士の取引で相殺しつつ、最終的にまとめて書き込むというのは手間と取引所の利益を考えればある意味自然の流れだが、これに関しても当初のブロックチェーンの理念とは離れてしまっている。そもそもBTCがBCHにハードフォークしたのも、ライトニングネットワークというブロックチェーンとは別のオフチェーン技術開発に取り組んでいるのも、ブロックチェーン上ではスケーラビリティ問題が解決できなかったからだ。つまり問題の根幹にブロックチェーンのアルゴリズム自体の問題があるのに、現状は小手先の対症療法で何とかしようとしている印象を受ける。

仮想通貨の未来とブロックチェーンの未来

ここから導かれる結論は、仮想通貨はアルゴリズムを入れ替えれば生き延びられる可能性は高いが、ブロックチェーンはアルゴリズムの不完全性を解決することが難しいので滅びゆく可能性が高いということ。そう考えると、良く言われるように仮想通貨には未来がないが、ブロックチェーンには未来があるというよりは、逆に仮想通貨には未来があるが、ブロックチェーンには未来がないという方が正しい。であるならば、そもそものアルゴリズムに欠陥のあるブロックチェーンにおいて、仮想通貨取引所のように大量の取引をリアルタイムで行う場合、今回のようなノミ行為の問題はいつまでも付きまとうことになる。その結果また違った問題を引き起こし続けるだろう。その度に仮想通貨の市場が混乱し、価格が乱高下するという状態が起こるのであれば、いつまで経っても仮想通貨の信頼性は担保されない。個人的には仮想通貨の未来に関しては面白いものがあると思っているが、最近の動向からブロックチェーンの未来に関してはかなり懐疑的に考えており、相場に関しても最終的に破綻する可能性の高い未来を考えると、やはり現状の仮想通貨の取引は素人には全くお勧めできない。

ギブソンの経営危機

個人的な思い出

最後のニュースはギブソンの経営危機について。これは海外のニュースであると共に、自分にとっても思い入れのあるニュースなので取り上げてみた。個人的にはGibson Les Paul Studio 2011 Wine Redを所有しているが、このエレキギターはアメリカのWashington, D.C.で友人の家に滞在していた際に、Seagullのアコースティックギターと共に購入したもの。このレスポールに関しては、自分の中で初心者のギターとは違う意味合いで購入した初のギターだった。ちなみにその友人は中国人の富裕層とも引けを取らない完全なる富裕層だったので、確かこれら以上に高価なギターを購入しており、買い物に行くと数十万円は1日で使い果たすような人物であった。しかし購入後その友人がギターに触れていた場面を見たことはほぼない。

エレキギターとロックスターの凋落

エレキギターはかつてロックスターの象徴であったが、ロックスターというもののイメージ自体が完全に破壊され、時代遅れになってしまった現代において、エレキギターもまたかつてのように少年が憧れる対象ではなくなってしまった。確かに自分としてもDAWやMaxなどを活用した作曲を中心としており、昨今のエレキギター離れは悲しい現象であると思う一方で、その時代の潮流は止められるものではないとも感じている。ただギブソンのような有名かつ一流の会社の経営が傾くようになるというのは、時代の必然ではあれどやはり衝撃的ではある。

アンティークと楽器演奏の価値

物の価値は文化を支える源泉であり、時代によって淘汰されてしまうものもあるがそれでも残すべきものはある。エレキギターはデジタル性を保ちながら、アナログ性のある物質でもあるという面白い特徴を持っているが、その価値が将来的に富裕層や特権階級だけのアンティーク的なコレクションになってしまうことに対する複雑な気持ちはある。またデジタルとアナログという二項対立に意味がなくなってしまった時代において、それでも楽器を演奏することに対する価値は変わらない。楽器を演奏することには、楽譜の読解、耳で聴いた音の読解を含めて、運指やグルーヴへの同調という様々な要素を同時並列的にこなす必要があるという意味で、時代を超えた価値がある。そこには一致と逸脱の反復があり、音によって紡がれる抽象的な色彩と映像は最終的に芸術になり得る。ギブソンの経営危機に関してはアンティークとしての価値、もしくは楽器演奏の価値の観点から残す価値のあるものを残していくことについて再考させられたニュースであり、個人的な思い出にポカンと小さな穴が空いたようで悲しいニュースでもあった。

Coincheckクラッキング事件 後編: 限りなく不透明な補償方針

Coincheckによる補償方針

Coincheckクラッキング事件について後編では限りなく不透明な補償方針について中心に書いていく。まず以下のリンクに書いてあるCoincheckによる補償方針を読んでみてほしい。

不正に送金された仮想通貨NEMの保有者に対する補償方針について

ここで重要な点を箇条書きで整理すると以下の3点になる。

・XEMではなく、JPYで返金

・補償時期と手続き方法は未定

・今後も事業を継続する予定

これらに関して次の項目で一つずつ詳細に検討していく。

限りなく不透明な補償方針

XEMではなく、JPYで返金

これに関しては返金を諦めていたものが返金される可能性が出てきたということで、Coincheckを賞賛する声も上がっている。その手のひら返しは不良が更生したら普通の人と同じことをやっても賞賛されるのと似た現象に見えるが、よく考えてみればこれは補償方針として問題外だろう。結論から言えば、盗難されたXEMはJPYではなく、XEMでそのまま補償するべきだ。何故かと言えば以下に挙げるような三つの理由から。

・JPYで返金した場合、返金する際のレートが不明瞭、もしくは顧客にとって不利だから。

・JPYで返金した場合、顧客は利益が出ていようが損失が出ていようが強制利確されたことになり、来年度の確定申告の義務が発生する可能性が高いから。

・顧客の財産は顧客のものであり、強制利確する権利がそもそもCoincheckにはないから。

返金レートについて

最初の理由である返金レートについては、ZaifのXEM/JPYレートを参考に、出来高の加重平均を使用したと書いてある。確かにCoincheckでは取引が停止されていたわけだからやむを得ない措置かもしれないが、問題はそのレートを算出した時間だ。先程のリンク先から引用すれば「CoincheckにおけるNEMの売買停止時から本リリース時までの加重平均の価格」と書いてある。しかしそもそもXEMの価格が他の取引所も含めて暴落したのはCoincheckクラッキング事件が主因であることは明らかであり、その暴落の原因を作っておきながらほとんど底値に近いレートである単価88.549円で計算したJPYで返金するというのは意味が分からない。またこの事件後には一時的にXEMの価格は上昇しており、その機会損失を含めてもこのレートを採用する妥当性は低い。そもそも不正検出時には約620億円、発表時には約580億円の価値はあったので、このレートで計算して約460億円を返金すると少なく見積もっても120億円、多く見積もれば200億円以上は顧客が損失を被ることになるわけだ。もしかしたら多くの人は金銭感覚が麻痺しているのかもしれないが、普通に考えてこれは仕方がないで済ませて良い金額でもない。

強制利確について

次の理由である強制利確について。これは先程の返金レートよりも深刻な問題になる。まず前提として現在の税制では仮想通貨をJPYに利確し、合計20万円以上の利益になった場合には確定申告の義務が生じる。つまり今回の件の場合は特別な救済措置がない限り、かなり多くの人が強制的に来年度の確定申告の義務を背負うことになるということだ。そもそも現在の税制を気にしてあえて利確せずにガチホしていた人もいるだろう。また今回返金される予定のレートより低いレートでXEMを購入していた人は将来値上がりした場合は損した気分になるだろうし、逆に返金される予定のレートより高いレートでXEMを購入していた人は勝手に損失が確定されたことになる。一方でCoincheckの視点で見ると、今回の件が法人税で損金に算入できるとすればむしろCoincheckは得したことになり、顧客に損失を押しつけ、自分たちは得をするような決定が許されるわけがない。

財産権について

顧客の財産権は顧客に属しているのであって、Coincheckに属しているわけではない。よってそもそもCoincheckが勝手に返金レートを決め、強制利確したことにして、JPYで返金するという判断をすることができない。なので顧客の財産権を侵害しないためには、盗難されたXEMと同額のXEMをそのままそっくり顧客に返金するしかない。そもそも今回の件で機会損失を含めて既に顧客には被害が出てしまっているのであり、その上さらに勝手に返金レート、強制利確、JPYでの返金という重大事項を決めてしまうのはどう考えてもおかしいだろう。

補償時期と手続き方法は未定

補償時期と手続き方法は未定。つまり数日後、数週間後に返金されるのか、数ヶ月後、数年後に返金されるのか、1億年後に返金されるのかはまだ分からないということだ。さらに手続き方法によっては、そこで何かしらの問題が発生する、もしくは返金されないなどの事態も起こり得るし、本当に支払い能力があるのかも確定していない。Coincheckによる補償方針が発表されたことで既に一部では安心ムードが漂っている。しかし、安心するのはせめて補償時期と手続き方法が確定し、実際に手元に返金されたお金が戻ってからにするべきだろう。

今後も事業を継続する予定

今後も事業を継続する予定との発表があったが、問題はそれができるかどうかだ。今回の件で日本における仮想通貨人口の多さと、仮想通貨取引所の圧倒的な利益率が表に出てきたわけだが、未だにブラックボックスになっている点は多い。仮に事業を継続する場合は、まずセキュリティ対策を全面的に強化することが必須になる。またそもそもCoincheckは金融庁が認可する仮想通貨交換業者に認可されていない。日本最大級の仮想通貨取引所であるCoincheckがなぜ中々認可されないかについては今まで様々な説が囁かれてきた。その正確な理由は分からないが、今回の件で明るみに出たセキュリティ対策の杜撰さを見ればその理由の一端は見えたと言っていいだろう。今後はCoincheckのみではなく、他の仮想通貨取引所も含めて金融庁を含む監視の目が強化される可能性は高く、そこから出てくる新情報によってはまた新たな動きが見えてくるはずだ。

カウンターパーティリスク

仮想通貨には多くのリスクがあるが、仮想通貨取引所を使用するリスクとしてはカウンターパーティリスクがある。これは今回のCoincheckクラッキング事件とも大きく関わるリスクだ。カウンターパーティリスクを簡単に説明すると、取引相手、つまりこの場合は業者であるCoincheck自体が破綻するリスクになる。仮想通貨取引所は海外を含めてかなりの数があり、仮想通貨取引所を使用する際は常にこのカウンターパーティリスクがつきまとうことになる。今回の件の場合はまだCoincheckが破綻すると決まったわけではないが、今後の動向によってはこのリスクが発動する可能性はある。もちろん何かを得ようと思えば何かしらのリスクを取ることは大事だ。ただ前編で書いたようなコールドウォレット、マルチシグなどは個人でも使用できるものであり、避けることが可能なリスクはできるだけ最小限に抑えることが重要である。また現在ではDEXやBancorといった仮想通貨取引所を通さなくてもウォレットから直接仮想通貨をやりとりできるプラットフォームもあるので、仮想通貨取引所に置いておく財産は最小限にする、もしくは普段は一切置かないということを徹底するべきだ。

後編のまとめ

後編ではまずCoincheckによる補償方針について、重要な点を3点に絞って整理した。次に限りなく不透明な補償方針という項目でXEMではなく、JPYで返金することが何故良くないのかを三つの理由と共に解説した。さらに補償時期と手続き方法、事業の継続予定などの点についても今後の不透明な展開を含めて記述した。最後に仮想通貨のリスクの一つであるカウンターパーティリスクを紹介し、個人が取れる対策方法を述べて記事を締めた。前編で説明した事件の経緯、セキュリティ対策、NEMについての基礎知識と合わせて後編を読めば、事件の全体の流れ、対応が不十分な点、リスクに対する対策も含めて理解できるように書いたつもりだ。

仮想通貨の振り返りと今後について

最近では出川哲朗のCMが話題になったり、仮想通貨の格付けが発表されるなど、最近の仮想通貨取引所を含む仮想通貨界隈は大きな動きを見せていた。今回の件は未だに決着しておらず、対応方法によっては仮想通貨の冬の時代、もしくはババ抜きの開始の引き金になる可能性もある。もちろん今回の件はXEMを盗難した犯人が一番悪いのであり、Coincheckはその視点で見れば被害者である可能性もある。しかし今回の連載記事で述べてきたように、虚偽説明を含めたセキュリティ対策が万全ではない状態で運営していたことを含め、Coincheckは顧客に対する加害者でもある。また仮想通貨全体としてはNEMに焦点が当たり、お茶の間を含めて玉石混淆名情報が垂れ流されることになった。個人的には久しぶりの仮想通貨関連の記事になったが、特に以前から主張は変わっておらず、基本的に素人は手を出すべきではなく、もし手を出すなら余剰資金のみでということだ。昨年末からの仮想通貨の加熱ぶりは、技術の発展とは無関係なものであり、それ故に強力な力を持っている。この流れがいつまで続くかは分からないが、ただ一つ言えることは自分の身を守れるのは自分だけということであり、そのためには情報をできるだけ集めた上で自分で判断するしかない。

Coincheckクラッキング事件: 連載記事リンク

Coincheckクラッキング事件 前編: 盗まれたXEMとホットウォレットとシングルシグと

Coincheckクラッキング事件 後編: 限りなく不透明な補償方針

Coincheckクラッキング事件 前編: 盗まれたXEMとホットウォレットとシングルシグと

仮想通貨の流れと象徴的な事件

今回の連載記事では昨日起きたCoincheckクラッキング事件について、前編と後編に分けて書いてみようと思う。昨年末はBTCとBCHのシーソーゲーム、仮想通貨の認知度の上昇からの全仮想通貨の暴騰、クリスマス休暇前から年末にかけての税制を意識した利確暴落。今年に入ってからは各国の仮想通貨に対する規制などを考慮に入れたさらなる暴落、そして今回のCoincheckクラッキング事件など仮想通貨界隈は常に話題に事欠かない。これらは相場に大きな影響を与えた流れを掻い摘んで列挙しただけだが、これだけ見ても仮想通貨は短期間で歴史を大きく塗り替えてきたことが分かる。特にBTC → 主要アルトコイン → BCH → 草コインと暴騰の流れは短期間で移動してきたが、全体的にはリテラシーの低い層が仮想通貨に流入してきたことで相場は益々混沌に満ちてきている。また年末利確 → 年始暴落の流れで税金が支払えなくなるリスクはNILOGでも何度か注意喚起してきたが、恐らく今回の事件も含めて今年の確定申告は阿鼻叫喚になりそうな予感がする。最低でも含み益ではなく、利確後、さらに言えば税金支払後でなければ億り人、自由億という概念は夢と思っておいた方が良いだろう。そんな中で今回の事件は象徴的な事件であると共に歴史上最大規模の盗難事件であり、仮想通貨に関わっている人以外もある程度詳しく知っておいた方が良い事件なので取り上げることにした。

事件の経緯

まず事件の経緯を2018年1月26日の時系列で整理すると以下のようになる。

01. 02時27分: 当時のレートで約580億円のXEMが盗難される。
02. 11時25分: XEMの残高の異変を検知。
03. 11時58分: XEMの入出送金を一時停止。
04. 12時07分: XEMの入金を一時停止すると告知。
05. 12時38分: XEMの売買を一時停止すると告知。
06. 12時52分: XEMの出金を一時停止すると告知。
07. 16時33分: JPYを含む全取り扱い通貨の出金を一時停止すると告知。
08. 17時23分: BTC以外の仮想通貨 (Altcoins) の売買を一時停止すると告知。
09. 18時50分: クレジットカード、ペイジー、コンビニ入金を一時停止すると告知。
10. 23時30分: AbemaTVで記者会見を行う。

記者会見について

記者会見 ≠ 公開処刑の場

事件が起きた当日というかなり早い段階での記者会見だったため、Coincheck側が準備不足だったことは否めない。もしくはその段階では言えない事柄も幾つか含まれていたと推測されるが、基本的には現在調査中ですというような歯切れの悪い発言が目立った。一方で記者会見に出席していた記者の多くは仮想通貨についての基本的な知見を欠いていると思われる質問、コメントが散見され、言葉遣いを含めて乱暴であり、全体的にかなり酷い記者会見だった。記者会見は事実確認の場であり、公開処刑の場ではなく、記者は正義の使者であるわけでもない。記者側が無意味かつ感情的に騒ぐほどに逆にCoincheck側に感情移入してしまうことも考えられ、正確な事実確認にとっても有害であるので、記者たちがまず記者会見の認識を改めることが必要だろう。

判明した事実について
ホットウォレットとコールドウォレット

まず盗難されたXEMはホットウォレットを使用して管理していたとのこと。この事実に関しては仮想通貨に詳しい人はかなり驚いたはず。ホットウォレットは通常コールドウォレットと対比されるが、単純化して言えば前者は常時インターネットに接続されている管理の仕方でセキュリティは脆弱、後者はインターネットとは切り離された管理の仕方でセキュリティは強固ということになる。Coincheckは「サービスの安全性」の項目で、コールドウォレットの使用をセキュリティ対策の一環として挙げていた。ただ「コールドウォレットによるビットコインの管理」とも書いてあるので、「XEMはビットコインではない」という言い訳もできるかもしれないが、解釈の仕方によっては虚偽説明として詐欺罪に該当する可能性がある。ちなみにコールドウォレットの例としてはハードウェアウォレットやペーパーウォレットなどがあり、ハードウェアウォレットはAmazonなどではなく以下のような公式ウェブサイトから購入することが重要だ。公式以外の場所で購入すると事前にマルウェアを仕込まれるなどして仮想通貨を失う危険性がある。

Ledger Nano S

TREZOR

シングルシグとマルチシグ

次に盗難されたXEMはシングルシグを使用して管理していたとのこと。シングルシグ (Singlesig) はシングルシグネチャ (Singlesignature) の略で、送金時に単一の秘密鍵署名を要求する仕組みのことを指す。一方でマルチシグ (Multisig) はマルチシグネチャ (Multisignature) の略で、送金時に複数の秘密鍵署名を要求することでセキュリティを高める仕組みのことを指す。つまりNEMには最初からマルチシグの機能が導入されていたが、Coincheckはその機能を使用せずにXEMを管理していたことになる。喩えて言えば、一つの宝箱を開けるのに一つの鍵が必要なのがシングルシグで、複数の鍵が必要なのがマルチシグ。シングルシグの場合は一つ鍵を盗まれれば宝箱の中身は盗まれるが、マルチシグの場合は一つ鍵を盗まれても宝箱の中身を盗まれることはなく、その盗まれた鍵をなかったことにして、違う鍵と取り替えることもできる。もちろんマルチシグを導入しているだけではセキュリティ対策になっているかどうかは分からず、鍵は別々の場所に保管するなどどのように運用しているかを含めて判断される。しかしセキュリティ対策が万全であることをアピールしていたCoincheckがNEMに仕様として導入されていたマルチシグを使用して管理していなかったのは大きな問題だろう。

NEM財団について

またNEMのコミュニティにはNEM財団という非営利団体がある。NEMは中央集権の仮想通貨ではないのでNEM財団に特別な権限があるわけではないが、NEM財団のコミュニティにおける影響力は強い。今回の件を受けてCoincheckは盗まれたXEMを実質無効化させるためにNEM財団にハードフォークを要請したが、この件に関してはNEMの脆弱性ではないとの理由で却下されたとのこと。今回のCoincheckクラッキング事件はビットコインにおけるマウントゴックス事件を彷彿とさせるが、このハードフォーク要請に関してはイーサリアムにおけるThe DAO事件を彷彿とさせる。イーサリアムにおけるThe DAO事件とは、イーサリアムを基盤としたThe DAOというプロジェクトが約65億円のクラッキング被害に遭い、その責任の一端がイーサリアムにもあるとしてハードフォークを行った結果、イサーリアムとイーサリアムクラシックに分裂した事件。ハードフォークを行うこと自体にも様々なリスクがあるため、今回のNEM財団の判断は基本的には正しい。またNEM財団のメンバーは現在盗難を行った犯人のウォレットに、NEMのモザイクという機能を使用してマーキングしている。しかしこの方法のみでは犯人を特定することはできず、また盗難されたXEMが例えば匿名性の高い仮想通貨などを通してマネーロンダリングされた場合、実質上追跡不能になる。また送金されたXEMが盗難したXEMだと分かっていたとしても、それを受け入れないことを強制することはできないという問題は残る。

NEMについて

今回の件で一躍有名になったNEMだが、報道機関を含めて勘違いが多いので基本的な情報を解説しておく。まずNEMはプラットフォーム名であり、通貨名はXEMである。また今回のクラッキング事件に関しては全面的にCoincheck側のセキュリティ対策が甘かったことに問題があり、NEMに問題があったわけではない。NEMにはPOS (Proof of Stake) の変形である POI (Proof of Importance) という仕組みがあり、今回の追跡についてはFungibility (代替可能性) の観点から問題があるとする意見もあるが、これらの是非についてはここでは議論の対象としない。ただNEMを恐らくNEOと間違えて中国系の仮想通貨と勘違いしている人がいたり、今回の事件はNEMの脆弱性の問題と勘違いしている人も見受けられるのでそれらは勘違いであると明言しておく。そもそも論として現状の仮想通貨には無限連鎖講のような仕組みがあり、初期参入者によるポジショントークが目立ち、市場操作性が高いと言えば確かにそれらは問題だが、それはNEMの問題というよりは仮想通貨全体の問題である。

前編のまとめと後編の予告

今回の前編ではまずCoincheckクラッキング事件の経緯を時系列でまとめた。そもそも盗難が発生してから検知までが遅すぎるという問題があるが、最大の問題はコールドウォレットとマルチシグを使用してXEMを管理していなかったことだ。またそれらの管理の仕方はセキュリティ対策に力を入れているとしていたCoincheckの宣伝内容と矛盾し、虚偽説明をしていたと言われても文句は言えない。またNEM財団によるハードフォークの拒否の判断は良かったのと、犯人のウォレットのマーキングはできているものの、それで追跡が完璧なわけでもないし、問題が解決したわけでもない。さらにNEMについての情報も錯綜している状況を考えると、まずは基本的な情報を抑えてから今回の件と向き合う必要がある。後編ではCoincheckによる補償方針についての話題を中心に書く予定だが、状況が刻一刻と変化していくので後ほど追記などを使用して対応していく必要がありそうだ。

Coincheckクラッキング事件: 連載記事リンク

Coincheckクラッキング事件 前編: 盗まれたXEMとホットウォレットとシングルシグと

Coincheckクラッキング事件 後編: 限りなく不透明な補償方針

「メトカーフの法則」と評価経済の二つの世界線: 非中央集権とトークンエコノミーの行方

「メトカーフの法則」と評価経済の二つの世界線

「メトカーフの法則」とは何か?

「メトカーフの法則」という法則がある。この法則について簡単に説明すると、ネットワークの価値とそのネットワークに接続する人間の数の関係性を考えた時に、前者は後者の2乗に比例するというものだ。この法則はムーアの法則と同じく非常に単純だが、SNS、仮想通貨、評価経済などの勃興を考える際に非常に役に立つ。例えばSNSにおけるフォロワーの数の価値や仮想通貨の値上がりは「メトカーフの法則」で大体説明できる。また評価経済におけるネットワーク、コネクションに価値があるということの発見は、仏教で言う関係性に価値を見出だす縁起の思想にも通じているし、非中央集権の考え方とも深い関連性がある。今後これらの概念を含めた評価経済が新しい経済圏を作っていくことは間違いがないが、個人的にはこれには二つの世界線があり得ると思っている。

評価経済の二つの世界線
一つ目の世界線 = 超資本主義

一つ目の世界線は評価経済が資本主義をアップグレードする形で超資本主義になり、今までよりさらに格差が拡大された世界が到来する。この世界線における評価経済とはつまりネットワーク経済、コネクション経済である。先行者利益がまず何よりも重視され、インフルエンサーの熾烈な争いが繰り広げられ、同じサービスを享受するにしても支払うコストが人によって全く異なることになる。この世界線は結局資本主義を先鋭化したものでしかないので、個人的には余り行きたくない世界線ではあるが、人類はこちらの世界線を選びそうな気もするのでそれに対する備えはしておくべきだろう。仮にこの世界線が到来した場合は、ベーシックインカムなどである程度自動的に金銭を分配するか、最低限生き延びられるカロリーを持つ食料をばらまく必要性がありそうだ。

二つ目の世界線 = N次オルタナティブ

もう一つの世界線は評価経済が資本主義とは違ったレイヤーで発展し、評価軸自体が乱立すること。この世界線における評価経済とは坂口恭平が提唱している態度経済というものに近いイメージかもしれない。この経済圏においてはある人にとって宝物であるものは、ある人にとってはゴミであり、ある人にとってはゴミであるものが、ある人にとっては宝物である。つまり個人対個人の間における交易が交わされ、そこには固定化されたヒエラルキーは存在しない。例えば人類のほとんどが価値が分からないものであっても、たった一人が面白いと言えば価値が生じ、また一方で人類のほとんどが価値があると言っているものであっても、自分が気に入らないなら価値はない。要するに人は他人の欲望に欲望するという資本主義の法則、記号論における欲望のトリクルダウン理論のようなものが一切無効な、本来の意味での評価が主体となる世界だ。個人的にはこちらの世界線を体現したいと思っており、アートとして規格外に取り組んでいるのもそうだし、過去に評価軸を乱立させること: N次オルタナティブの可能性という記事で書いたような内容にも近い。

非中央集権とトークンエコノミーの行方

非中央集権とトークンエコノミー自体はフラットな概念であるが、非中央集権的なシステムとトークンエコノミー的なシステムは2018年にある程度形を形成していくと考えられ、評価経済の世界線の輪郭も見え始めることだろう。個人的には先程も述べたように一つ目の世界線 = 超資本主義が訪れると予想しているが、資本主義の世界においても違うレイヤーで生きることが可能なように、そのような世界線においても二つ目の世界線 = N次オルタナティブを体現することは可能である。つまり物事が上手くいかない場合の5つの対処法: 複数の角度から同時並列的かつ高速に何度も試すことという記事の項目で書いたような「Perm: do both」の考え方でレイヤーの違う両輪を同時に動かしていく柔軟性が必要になっていく。どのような世界線が訪れるとしても、マスから個の時代における生存戦略において傍観者はBot、もしくはノイズと余り変わらない存在になってしまう。よって自分自身のゴールを持った上で自分なりのポジションを確立すること、情報技術との親和性を高めること、情報の受信者ではなく発信者になることがこれまで以上に重要な時代になっていくだろう。現状の非中央集権とトークンエコノミーはその理念とはほど遠い状況にあるが、自分としてはその理念がN次オルタナティブとして結実するような未来を創るために動いていきたい。

仮想通貨の税金計算: 「G-tax」という名の救世主

国税庁によるリストアップ

今年に入り、国税庁が億り人や自由億などの仮想通貨に対する投機、投資によって多額の利益を得た人物をリストアップしているというニュースが入ってきた。今年賑わうニュースの一つとして既に確定しているのは仮想通貨の利確をした人物による脱税だろう。たとえ確定申告をしない、もしくは過少申告するなどの場合でも、数年程度泳がせてから税務調査に入るということも多いため、このニュースは数年以上にわたって続いていく可能性が高い。また仮想通貨界隈では節税対策として海外移住や法人設立、もしくは事件に巻き込まれないためにボディガードの雇用などの流れも今年以降はさらに加速していくはずだ。どちらにせよ億り人や自由億だけに限らず、確定申告義務のある人は必ず確定申告することをお勧めする。また以前仮想通貨の税制に対する国税庁の見解という記事でも書いたように、仮想通貨の取り扱いについて熟知した税理士は現状数少ないので、けちらずに「GUARDIAN」のようなサービスを利用するのも手だ。

「G-tax」という名の救世主

とはいっても仮想通貨の税金計算を自分一人でやることは難しいし、税理士に依頼する前に自分でどの程度の税金を支払うことになるか確かめたい人も多いだろう。今回紹介するのはそういった人々のニーズに応えるべく救世主のように登場した、「G-tax」という仮想通貨の税金計算をサポートするサービスだ。現在はβ版だが期待を込めて言えば、恐らく今年の確定申告までには様々な機能改修がなされて使えるサービスになっているはずだ。使い方は簡単で各取引所から取引履歴をファイルとして出力し、「ファイル取り込み」、「計算実行」で計算するだけ。ちなみに個人的には昨年の終わりに全ての仮想通貨を利確し、日本円に変えて「残高 – 入金額」から計算しようとしたが、端数が取引できなかったり、XMPに変換するためにウォレットに送金したMonaが処分できなかったりで断念した。また「G-tax」のようなサービス抜きに自分でも税金計算をしようとしてみたが、余りに複雑すぎて中断していたので、「G-tax」のようなサービスには感謝の気持ちしかない。

「G-tax」

Zaifの罠

ただ「G-tax」は悪くないのだが、一つだけ罠があった。それはZaifの取引履歴をCVSでダウンロードできないということ。以前自力で仮想通貨の税金計算をしようとした時にダウンロードした分はあるのだが、それ以降の取引履歴のCVSは今のところダウンロードできていない。これは一時的な中断ではあるのだが、昨年末までに再開する予定と言っていたものの、未だに再開されていない。まさかそんなことは起こらないと信じたいが、仮に確定申告までに再開しない場合は、手動でデータを打ち込んでいくしかないかもしれない。Zaifは過去に頻繁にサーバーが落ちることで有名だったが、昨年末からはある程度の改善を見せた。なので現状様々な問題に対処する中で、対処が追いついていないということだと思われる。なのでこれに関しては割と楽観的に見ているが、しばらく様子を見つつどう動くか決めていこうと思う。

複数のシナリオを持つこと

仮想通貨と仮想通貨の税制に対しては、複数のシナリオを持って対処することが重要である。例えば仮想通貨に対してはバブルであるという見方と、法定通貨のハイパーインフレであるという見方があるが、どちらの見方であってもどのようなバブルなのか、もしくはどのようなハイパーインフレであるのかといったようなもう一段解像度を上げた見方が必要になってくる。たまに誤解している人を見るが、バブルであることと価格が上昇することは矛盾しないし、たとえ法定通貨がハイパーインフレであったとしても法規制次第で一気に状況は一変する。また仮想通貨の税制に関して言えば、株やFXのように将来的に分離課税になることに賭ける人や使い道が増えることを前提としている人も多い。長いスパンで見れば確かにそうなる可能性はあるが、そうなるまでにかかるであろう年月と仮想通貨の含み益が減少するリスクも考慮に入れた上で判断した方が良いだろう。含み益は含み益なのであって、含み益で億り人、自由億と言っていても、それが将来的にどうなるかは現時点では誰にも分からず、税金計算を考慮に入れない億り人、自由億には余り意味はない。そういう意味で仮想通貨の税制に対しては大別すると毎年利確する人と含み益の状態でずっと保持する人に分かれるが、自分がどちらの立場であったとしても複数のシナリオを考慮に入れて行動することは大事だし、最終的には確定申告についても考慮に入れた上で各自判断することをお勧めする。

「Gackt ICO」というパワーワード 後編: 「SPINDLE」のホワイトペーパーを現代思想とV系の観点から読み解いてみた

現代思想とV系の観点からのホワイトペーパー読解

SPINDLE White Paper

現代思想とV系と仮想通貨/ICOに詳しい人物は余りいないと思われるので、後編である今回はその独自の特異性を活かして上記リンクに掲載されている「SPINDLE」のホワイトペーパーを解説してみる。まず文章全体に目を通してみると、ホワイトペーパーの文章が下手すぎるので、色々添削したくなる。まず定義が定義になっていないし、分かりにくすぎる。しかも簡単なこと、もしくは書く必要すらないことを、より難しく、もしくはより格好良く書きたいという意識が先行しているため、不必要な装飾と、一文が回りくどくて長いという特徴がある。全体的に自己陶酔した文体とでも言えば良いのだろうか。これは衒学的であるというよりは、自己愛的であるという表現の方が相応しい。知性には一見難しそうな概念を、シンプルかつ分かり易く噛み砕いて説明できる能力、もしくは王様は裸であるということを指摘する役割も含まれているはずだが、難しさと格好良さを優先し、自ら派手に着飾った裸を露出するという心意気にはある種の様式美を感じた。また全てにおいて大げさで主語が全体的に大きい傾向があるが、実際には当たり前のことか、意味不明なことか、事実誤認か、小粒なことしか言っておらず、読むべきポイントは少ない。

七つの用語解説

前編で既に「SPINDLE」についての個人的な見解は述べているので、今回の記事ではホワイトペーパーに登場する七つの用語に関して現代思想とV系の観点から解説していこうと思う。ちなみにその用語だけを解説するのではなく、その用語が使用されている項目、文脈や周辺の文章を含めて解説していく。

「Fallibilism 可謬主義≒SPINDLE」

この言葉の注目ポイントとしては英語と≒が使用されていること。英語はとりあえず格好良いので併記する必要があるし、=ではなく、≒の方がポイントが高く、一見何か深い意味があるように見える。また文章中の「仮想通貨≒暗号通貨(以下暗号通貨とする)」において≒が使用されているのもそういう意味で、「仮想」ではなく「暗号」を採用しているのはその方が闇を感じさせ、ギリギリそっちの方が格好良いからである。また「〜主義」という言葉は後に頻発することになるが、この言葉自体がV系の観点からはイケているので、パブロフの犬並みに多用せざるを得ない。「可謬主義」とはそもそも「無知の知」と「反証可能性」を足して2で割ったような概念であるが、それが「SPINDLE」の定義というのは意味不明、もしくは何か意味がありそうで何も意味が無い定義であり、「再帰性(非中央集権と中央集権の縦断及び再帰的帰結等)」のような書き方は()の内部が雄弁であるという意味で悪文の代表的なものである。また可謬主義を「知識についてのあらゆる主張は、原理的には誤りうる」、「中央集権型概念と即座に対立する概念」という意味で使用しているようだが、仮に前者の意味が正しいとすれば「非中央集権」であろうが「非中央集権と中央集権の縦断及び再帰的帰結等」であろうが、原理的には誤りうるという点で前者と後者の意味、もしくは「SPINDLE」自体が既に自己矛盾している。

「プラトン主義」

まずこの文脈で「プラトン主義」という用語を使用する必然性は皆無なので、「プラトン主義」という言葉を使用してみたかったというのがこの言葉が採用された一番の動機だろう。「プラトニズム」でも良かったはずだが、「〜主義」という言い方に揃えたかったのだろうか。「プラトン主義」の意味合いとしては幾つか考えられるが、この文脈においては「プラトン主義」は「イデア論」を主体として理想を原理主義的に唱えて信仰する立場として使用されているようだ。つまり「SPINDLE」が中央集権のシステムであることを正当化するために、「非中央集権」における民主化を絶対視する立場は現実的ではないとし、それらの立場を「非中央集権至上主義」と定義しているように読める。ここで一言文章の書き方についてアドバイスするならば、一度定義した言葉はできるだけそのままの形に統一し、継続して使用するべきであり、「非分散・非中央集権」、「広義的非中央集権概念」、「非中央集権主義者」、「非中央集権型信望」、「非中央集権型」などの用語はできるだけ統一した言葉を使用して整理するべきである。また「統制的社会」などの言葉も定義されないまま繰り返し使用されているが、そういった雰囲気だけで定義なしに言葉を乱用するのも文章の分かりづらさを増加させるという意味で読者に対して極めて不親切である。

「鏡面的再現」

まず「鏡」というキーワードはV系の観点から無条件にポイントが高い。何故かと言えば自分を見つめるナルシシズムを体現するためには欠かせない道具だからだ。現代思想的には「鏡」と言えばジャック・ラカンの「鏡像段階論」が連想されるが、特にそういった含意はないようだ。また「鏡面的再現」という言葉は一般的な言葉ではないので、使用する際に定義が必要だと思うが、例によってその言葉の定義は見つからない。この用語が使用されている項目自体の内容を一言で言えば、「SPINDLE」で扱う仮想通貨ヘッジファンド、ICOトークンの中にも優秀なものとそうでないもの、もしくは悪質なものがあるから投資は自己責任でやってねということである。要するに社会に善し悪しがあるように、「SPINDLE」のプラットフォーム内部で扱われるものにも善し悪しがあり、それは社会構造を鏡のように反射したものであると言いたいのだろうが、実際には「社会構造の鏡面的再現としてのSPINDLE」と書きたかっただけだろう。この極めて無内容に近い当たり前のことを、一見難解に見える言葉と難解に見える図によって説明しているので、この項目はその他多くの項目と文章同様そもそも書く必要性すら感じない。

「Stand Alone Complex」

「Stand Alone Complex」は「Smile Man」と「Anonymous」という言葉と共に使用されており、本文にも書いてある通り攻殻機動隊から引用した言葉だ。文章の内容は相変わらず読むべき価値がなく、論理の飛躍と妄想に満ち溢れており、自己陶酔の余波でこちらが酔いそうになる。もちろん攻殻機動隊は素晴らしい作品なので、読むもしくは観るべきだが、「SPINDLE」とは全く関係がない。また「記号依存的勝利錯覚者」という用語が出てくるが、脚注を引用すると「例えば特定の国家、民族、企業、集団に所属することによる自己認知欲求における依存心。現在のところ人類の大半がこの認識の領域の中で生きていると思われる。」となっている。この前半の文がこの言葉の定義だとすれば、「例えば〜」で始まる定義文はおかしいし、「〜者」という存在を意味する言葉なのに何故「〜依存心」という言葉で文が結ばれるのかの意味が分からない。もしかすると書いている本人も意味が分かっていないのかもしれない。またこれが定義文ではないというのならば、また定義を書かずに勝手な造語を作って読者を混乱させているという意味で文章を書く素質も資格もない。というよりICOという投資として金銭が関わる話の説明をこのように分からせるつもりすらない文章で書く時点で、このプロジェクトがどういうものなのかというメッセージを悪い意味で伝えてしまっているとも言える。また「SPINDLEが、究極的には、今までにない人類を創造しうる可能性を保持することとなり」の部分は前後関係を何度読み込んでも何故そうなるのか見当も付かない。

「概念的社会勝利者」

「概念的社会勝利者」という言葉は先程出現した「記号依存的勝利錯覚者」、後に出現する「統制経済主義者」と同じく「〜者」という形式を取っている言葉であり、「〜主義」と同様にある種のフェティシズムを感じさせる言葉なのかもしれない。しかしこの言葉も「ここで言う概念的社会勝利者とは、SPINDLEの場合で言うところの下記が該当する。」と言っておきながら、定義が存在しない。またこの項目でも登場する意味不明な図も相変わらず健在なわけだが、項目全体としては詐欺師、ハッカー (本来はクラッカー) が出現した際に司法当局を含めて「SPINDLE」の運営がどういう対処をするかは未定という無内容な内容。さらにこの項目でも先程の「鏡面的再現」の変形であると思われる「社会的鏡面モデル」という言葉が使用されており、相変わらず用語を統一、整理する気は一切ないようだ。

「Slave(奴隷)」

本文から引用すると「SPINDLEは、現在の伝統的金融関係者 (ヘッジファンドも含む) をSlave (奴隷) と定義している。」となっている。これはつまり、LUNA SEAのファン = SLAVEに対する宣戦布告をGacktが行ったという解釈で良いのだろうか?内容としては仮想通貨界隈に良くある既存の金融関係者に対する批判に近いが、現実はここに書いてあるほど単純ではないだろう。また彼らに対して「門戸を開く」というようなことも書いてあるが、金融関係者が「SPINDLE」を利用して投資をするデメリットは無限に思いつくものの、メリットは良く分からないというのが正直なところだ。さらに現代思想的には奴隷という概念はミシェル・フーコーによる「バイオパワー」、ジョルジョ・アガンベンによる「ホモ・サケル」の議論などが思い浮かぶが、どうせやるならその辺の思想なども整理した上で論じてほしかった。

「統制経済主義者」

最後に紹介する用語は「統制経済主義者」という言葉。「〜者」という言葉は大抵批判的な文脈で使用されており、この言葉の定義は例によって存在しない。しかし「SPINDLEは、その存在において、統制経済主義者・政府の攻撃対象となる可能性がある。」と書いてあることからも、既存の政府、もしくは既存の政府を信望する者を批判的な意味合いでまとめた言葉と解釈するのが妥当だろう。また項目の内容の中に「ファースト主義の台頭」というような時事ネタを細かく入れてくる部分が、嘘を付く時は少しだけ真実を入れておいた方が良いという教訓を上手く活用していると感じる。さらに「強制的政府」などの未定義、不統一語の乱用を忘れない部分も流石の一言である。

ここまで来てホワイトペーパーの文章全体における文体、内容から漂う自己陶酔に対する違和感の正体が遂に見えてきたが、その根源には既存の権力に対するレジスタンスの立場を装う、もしくは自己洗脳することによる、ある種の高揚感があるのだと感じた。これはカルトにありがちな一種の変性意識状態であり、以前書いたウーマンラッシュアワーの「THE MANZAI 2017」でのネタから考えたことという記事で、村本大輔から感じた自己陶酔の根源もここにあるのではないかと感じた。実際この二つに共通するのはどちらも大した内容は含んでいない、もしくは偏った思想が入っているが、当人はやたら巨大な仮想的と戦っているかのように自分を装い、その敵と味方というラインの選別においてリアリティが逆転してしまっているために、違う立場の人間に説得されればされるほど自分が世界を救うヒーローであるかのように錯覚し、むしろ自分の狭い視野の範囲内の確証バイアスに基づいた判断を深めて孤立していってしまうということだ。芸能人という職業が知識をそれほど必要とせず、想像の世界におけるリアリティの強化、つまりトランス状態に入ることが得意な人が多いということから考えても、これらに共通する自己陶酔は時代のエモさの追い風と重なって今後も大きな潮流になっていく予感がする。それは本人にとっても社会にとっても非常に危険性が高いということは言えるだろう。

今回の連載記事のまとめ

今回の連載記事の前編では「SPINDLE」について全体的な内容と個人的な評価をまとめた。後編では「SPINDLE」のホワイトペーパーについて定義が不十分であることと、文章全体の自己陶酔的な特徴と修正するべき欠点を挙げた上で、現代思想とV系の観点から七つの用語を中心に解説した。現代思想の観点から言えば、ICOのホワイトペーパーに対する「ソーカル事件」がそろそろ起きても良い頃合いであるが、そうなると既存の仮想通貨/ICOも含めてほぼ全てがデタラメという結論に至りそうなので、自然淘汰を待つ必要があるだろう。またV系の観点から言えばPIERROTの「Waltz」における「自己陶酔のダンス」を「飽き足りず繰り返している」様を延々と見せつけられ続けたようなホワイトペーパーだったと言えるだろう。Gacktのソロデビュー・ミニアルバム『Mizérable』は好きだったのだが、表立った事業家デビューとしての「SPINDLE」は好きになれそうにない。最悪Gacktが違う世界へ旅立って行ったのだとしても、HydeやYoshikiが「SPINDLE」やICOに巻き込まれないことを切に願う。

「Gackt ICO」というパワーワード: 連載記事リンク

「Gackt ICO」というパワーワード 前編: 「SPINDLE」とは何か?

「Gackt ICO」というパワーワード 後編: 「SPINDLE」のホワイトペーパーを現代思想とV系の観点から読み解いてみた

「Gackt ICO」というパワーワード 前編: 「SPINDLE」とは何か?

「Gackt ICO」というパワーワード

先日「Gackt ICO」というパワーワードが世界に解き放たれたのは周知の通り。その評判も周知の通り。そんな世界線に辿り着いてしまった今回は「Gackt ICO」について、前編は「SPINDLE」とは何か?、後編は「SPINDLE」のホワイトペーパーを現代思想とV系の観点から読み解いてみたという観点から連載記事としてまとめてみる。結論から言えば将来的に価格が上がるか下がるか、上場するかしないかは分からないので、内容を一切考慮に入れず、たとえ詐欺であったとしても構わないという人のみが投資すれば良いと思う。最近の一部の仮想通貨、ICOにおける、価格が上がってしまえば、もしくは上場してしまえば詐欺だろうが何だろうが構わない、むしろそれを指摘した人物が押し込まれるという風潮は長期的に見て市場に大きな歪みを作り、ブロックチェーン技術によるエコシステムの発展のためにも良くないと考えている。よって個人的にこのプロジェクトに投資をする予定は今後も含めて一切ないことは最初に明言しておく。

「SPINDLE」について

「SPINDLE」とは何か?

SPINDLE

「SPINDLE」とは通貨記号を「SPD」とする仮想通貨の投資・運用プラットフォーム、もしくはプロジェクトのことを指す。要するに「SPINDLE」ではICOによって「SPD」を得ることができ、そのプラットフォームの内部で仮想通貨ヘッジファンド、ICOトークンに投資できるというシステムが構築される。より具体的に言えば自分で善し悪しを見極める自信、もしくは知識がない人に対して、「SPINDLE」という中央集権プラットフォームを提供し、SPINDLE評議会によって選定した仮想通貨ヘッジファンド、ICOトークンに投資できるようにすることで、より一般層からの投資のハードルを低くしようという狙いがあるとのことだ。ただICOの参加条件を読むとむしろ初心者を排除しようとしているように見える。ちなみに将来的な実現可能性は不明だが、VISAとMasterCardのデビットカードと提携することで、「SPD」を決済可能にすることを目指しているようだ。しかし現在は法定通貨との交換手段はなく、上場も決定してないので、「SPD」を幾ら持っていても法定通貨という観点から見れば現状無価値になり、「SPINDLE ICO ROADMAP」に書かれている2018年5月以降の予定に関しても、極論数百年後でも1億年後でも良いという意味で余り意味を成していない。

「SPINDLE」の実態

非中央集権を仮想通貨の最も大事な部分と考える人たちにとっては、「SPINDLE」自体、もしくはVISA、MasterCardという中央集権のシステムを入れることには拒否反応があるだろうし、知識のある人たちは自分のウォレットもしくは海外も含めた取引所で自由にやりとりすれば良いので、特にメリットはないだろうし、その層はそもそもターゲットではないだろう。またICOに対しては現在世界中で規制が強化されており、それは日本も例外ではない。日本においては実質上、仮想通貨交換業の届出をする、もしくはその業者と契約しないとICOは違法状態になっており、金融庁の監視が強化されている。またアメリカでは著名人が広告塔になるICOは米国証券取引法違反として規制の対象になりつつあり、米国証券取引委員会 (SEC) が監視を強めている。その意味で言えば、SPINDLE発行体法人と関係会社を英国王室直轄領ガーンジー諸島に設立すること、またGacktが本名とされる名前を出したのも、ICO規制回避、もしくは広告塔ではないというアピールなのかもしれないが、それで完全にICO規制回避ができるとは考えにくく、今後の動向が注目される。ちなみに「SPINDLE」のプロジェクトをバックアップする株式会社BLACK STAR&CO.とBullion Japan株式会社は昨年証券取引等監視委員会から行政処分を受けたドラグーンキャピタル株式会社と運営主体がほぼ同一であり、他にも掘れば掘るほど様々な情報が出てくるが、投資を考えている場合はそれらの情報も判断材料となるだろう。

ドラグーンキャピタル株式会社に対する行政処分について

Gacktのブログ記事について

【大城 ガクト】と【 仮想通貨 】

上記リンク先のGacktのブログ記事で書いてある「【仕事】と【投資】を必ずパラレルで持たなきゃダメ」というのはその通りだと思う。さらにいえば仕事は遊びであり、投資はお金がお金を稼ぐものであると言える。しかし現状のように実際の機能性と市場価値が乖離しすぎている仮想通貨を投資という言うのは難しいし、ICOを投資というのはもっと厳しいだろう。また彼の仮想通貨、ブロックチェーンに対する見解はかなりの大風呂敷を広げているように読めたが、結局は値上がりするという投資的な意味での市場価値の観点が中心になっている。しかし例えば技術的に言えばブロックチェーンはスケーラビリティの問題やハードフォーク祭りといった大きな問題を抱えているし、「金融犯罪も減る」というのはDark webなどではビットコインでの取引がなされ、犯罪組織を中心にマネーロンダリングが行われている現状を完全に無視した希望的観測である。また「銀行の建物」がなくなるというのもインターネットが普及すればテレビはなくなるというくらいの安易な予想だと感じる。もちろん銀行は斜陽産業であり、自然淘汰はされるだろうし、ATMはなくなるだろうが、投資ファンド、銀行、国家も続々と仮想通貨の世界に参入してくることは明らかだ。さらに財布や紙幣がなくなるというのも結果論に過ぎず、むしろ大事なのは中央集権的なプラットフォームを非中央集権的なプラットフォームがどう開放し、エコシステムを作り上げるのか、もしくは既存のシステムと折り合いを付けるかであり、そういった理想と現状の乖離、もしくは大きなグランドデザインを語ることなく仮想通貨に対する投資について語るのは片手落ちであると感じた。

「Gackt ICO」というパワーワード: 連載記事リンク

「Gackt ICO」というパワーワード 前編: 「SPINDLE」とは何か?

「Gackt ICO」というパワーワード 後編: 「SPINDLE」のホワイトペーパーを現代思想とV系の観点から読み解いてみた

Keepa: Amazon Price Tracker

Amazonの商品の価格変動

Amazonの商品の価格は常に変動している。何故かというとAmazonに掲載されている商品はある特定のアルゴリズムによって、自動的に価格変動するように設定されているからだ。なのでこれはセール期間中やAmazonマーケットプライスに限った話ではない。むしろセール期間中に値引きされていると思って購入した商品が、実は普段より高値に設定していた価格から値引きされている値段だったり、平均的な価格より高値である場合さえある。なのでAmazonで安値で商品を購入したい場合はAmazonの商品の価格変動の推移を調べる必要がある。

Keepa: Amazon Price Tracker

Amazonoの商品の価格変動の推移を調べるためには、以下のKeepa: Amazon Price Trackerをブラウザに導入するのが一番早い。

Keepa: ブラウザの拡張機能

Keepaの全ての機能は完全無料、登録不要で使用でき、現在対応しているブラウザはFirefox、Google Chrome、Opera、Internet Explorerになっている。ブラウザの拡張機能を導入したらAmazonの商品ページに行けば、Keepaが実装されているのが分かるはず。機能としては「Price History」、「Track product」、「Data」、「Setting」の四つがある。この中で一番重要な機能は「Price History」で、「Setting」の「Range」から「Day」、「Week」、「Month」、「3 Months」、「Year」、「All」と表示する価格履歴の期間を設定できる。これを眺めることで、価格変動の推移が一目瞭然になる。また「Track product」では自分で商品の目標価格を設定し、その価格より安くなるとメール、SNS、RSSなどの方法で通知が送られるように設定できる。これは価格変動率が大きい商品、定期的に購入する商品、安く購入したい商品がある時に役立つ機能だ。「Data」は登録しないと使用できないが、「Product Details」、「Offers」、「Variations」などの機能が使用できるようになる。通常は「Price History」、「Track product」の機能のみで十分だと思うので、さらに商品の詳細な情報を知りたい人のみ登録して使用すれば良いだろう。

注意点と欠点

今回の記事ではKeepa: Amazon Price Trackerを紹介したが、一つ注意すべき点はAmazonが常に商品を最も安く手に入れる手段ではないということ。確かに便利さにおいて他の追随を許さないAmazonではあるが、最近は荷物が届かない件についてという記事で書いたように、問題が全くないわけではない。例えばAmazon Echoの競合であるGoogle Homeを扱わないといったように、普通に手に入る商品をあえて置いていないこともある。またKeepa: Amazon Price TrackerではAmazonで扱われている商品に関する価格変動が分かるだけであって、価格.comのように幾つもの販売店が価格を登録していて、その価格を比較するというようなものとは性質が異なる。Keepaではタイムセールの価格は比較できないなどの欠点もあるし、これも万能であるわけではない。ただそういった注意点と欠点を認識した上でKeepaを使用するのであれば、有効に機能することだろう。

Amazonの狙い

最後に本題とは外れるが、Amazonの狙いについても簡単に書いておきたい。そもそもAmazonはWalmartとは違って小売という概念を拡張するだけの企業ではない。むしろAmazonは常に新しいインフラを作っている企業であると考えた方が捉えた方が実態に即している。例えばバーチャルダッシュは物理空間にボタンを設置することで、定期購入に対する新しい注文の回路を建設したと捉えることができる。これは言い換えるならばIoTという物理空間と情報空間を接続するための技術を使用して、新しいインフラを建設したということだ。この観点から捉えれば、ドローン宅配便、Amazon Alexa、Amazon Goなどのサービスを何故Amazonがやり始めているかの理由が見えてくるだろう。Google、Appleなども含めて情報空間におけるインフラを抑えることが現代における大企業の最優先事項なわけであり、今後はAIの開発、活用と情報空間と物理空間をどうやってシームレスに繋ぐかという観点が重要になってくる。日本の企業で言えばソフトバンクはインフラを抑えることの重要性を認識している数少ない企業の一つであり、スマホを含めた携帯電話の事業をやってきたのもそのためだし、AIの導入に意欲的なのも同じ理由からだ。ここを理解しているか理解していないかは未来に行くほどに重要な観点になってくるし、インフラに対して最大限の投資と実装を繰り返しているAmazonの覇権はまだしばらく続いていくのだろう。