個展プランをつくる 6: 《Fragments of a CD in a Small Bottle and Seaweed in a Light Bulb Surrounded by Dry Flowers》

CDという名の化石

光学ドライブの不在

CDは化石と化した

2018年である現在、そのことに異論を唱える者はほとんどいないだろう。自分の環境を振り返ってみても、家で使用しているiMacには光学ドライブが存在しない。当然iPhoneなどのスマホやiPadなどのタブレットには光学ドライブに相当するものなど付いていない。つまり円盤を再生するためには、外付けのドライブを購入するか、ノートパソコンを利用するしかない。これが何を意味するかと言えば、基本的にPCを利用することのないスマホ/タブレット世代はCDを含む円盤を再生する手段すらないということだ。使用できないものは存在していないに等しい。つまりCDは誰もが認めるように、既に化石である。

空気化する音楽

音とは波である

その波形をデータとして物理的な媒体に収録したものがCDということになる。つまり重要なものは元々データなのであって、CDはただの入れ物に過ぎない。一度リッピングしてしまえば用済みだ。しかしそのリッピングすら面倒くさいので、ダウンロードが流行する。しかし次第に人々は気付き始める。データはアクセスできれば良いのであって、所有する必要などないということに。かくしてストリーミングが流行し、音楽は空気となった。空気であるということを悲観する必要はない。何故ならそれは必要なものであり、いつでも自分の周辺を漂っているものだからだ。

マニアと物質性

もちろんこの動きに対する反動も登場する。CDは完全なるマニア向けのグッズとして、物質性を再度強調しながら局地的に復活する。アナログレコードブームはこの流行の延長線上に位置付けられるだろう。それと同時にハイレゾ音源というCDのクオリティを超えたとされる音源も一部で流行する。これはCDの規格である44.1 kHz、16bitを超える情報量が入るものを指すが、収録内容によっては必ずしも元のクオリティを超えているとは限らない。このような流れを受けて制作した作品がコンペで賞を受賞した『Unexpected Echoes』であり、ハイレゾ音源としても制作しているし、一方でアート的な文脈におけるインスタレーション作品として物質性を強化した作品にもなっている。

《Fragments of a CD in a Small Bottle and Seaweed in a Light Bulb Surrounded by Dry Flowers》

《Fragments of a CD in a Small Bottle and Seaweed in a Light Bulb Surrounded by Dry Flowers》では、『Unexpected Echoes』のCDを破壊した欠片を小瓶に詰めている。破壊の方法は洗面器にお湯を入れ、ハサミで切り刻むという方法を使用した。切り刻まれたCDの欠片は情報の再現性を失った純粋な物質となり、CDという媒体は小瓶の中に埋葬されることになる。またその小瓶の隣に横たわる電球は白熱電球を象徴化したものであり、その中に封入した海草は環境問題を象徴化している。何故なら白熱電球は環境問題から使用を制限されてきており、いずれ失われて化石となるものの象徴だからである。カセットテープの復刻版が流行したように、白熱電球もいずれ復刻版が流行することになるだろう。人は失われて化石化したものにノスタルジーを感じ、富の象徴として収集したがるものだ。そしてこれらの化石化した物質をドライフラワーで包み込むように埋葬した。化石は一度死ぬことによって始めて、タイムカプセルの中に侵入する権利を得るのだ。

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