個展プランをつくる 5: 《Blood and Needle in a Small Bottle Surrounded by Screws》

「フェティシズム」について

「アート」と「フェティシズム」

「アート」と「フェティシズム」には切っても切れない関係がある。「フェティシズム」とは個人的な好みの偏り、つまり「倒錯した偏愛」のことだ。この言葉は元々「対象に対する性的倒錯」を指す言葉なのだが、現在では「性的」であるかどうかに関わらず広く使用されている言葉であるように思う。なのでここではその慣習に従って、「フェティシズム」を広義の意味で使用する。ここで「アート」に話を元に戻すと、「アート」は個人的な偏愛を通してしかアウトプットできない。これは一見そのようなものと完全に切り離された作品を作っていると思われがちな、田中功起や落合陽一に関しても当てはまることだ。何故なら田中功起は「コンセプト」に対する「フェティシズム」を持っているし、落合陽一は「メディア」に対する「フェティシズム」を持っているからだ。そもそも「アート」を作ろうというモチベーションに、「フェティシズム」的な欲望がゼロである人間を想定することは難しい。

「フェティシズム」の源泉

そこでここに一つの疑問が誕生する。

「フェティシズム」は何故発生するのだろうか?

完全に個人的な仮説ではあるものの、知性が高い人の「フェティシズム」ほど他人に理解されないものが多くなってくる気がする。それは何故かと言えば、知性が高い人は抽象思考が得意であることに原因がありそうだ。抽象思考とは一見無関係な対象同士を結びつける能力のことを指す。であるならば、一般的には結びつかない物質や記号が頭の中で結びついてしまい、それらが報酬系や性欲の回路とも結び付くことで「フェティシズム」が引き起こされるのではないだろうか。ここで注意したいのは、たとえ知性の高い人の中に変態が多く含まれていたとしても、変態だから知性が高いとはならないということだが。

「ASMR」とドーパミン

個人的には「ASMR」と呼ばれる視覚や聴覚(個人的には聴覚の方が刺激が強い)を利用した刺激に強い「フェチズム」を覚える。これは恐らく瞑想と大周天の修行によって、目を閉じて1秒でドーパミンを出せるようになってしまったこととも関係している。特におでこの部分と、後頭部の斜め上側に対して想像上で刺激を加える(光が通過したり、滝の水が落ちて当たるなどのイメージを使用)と強い快感を覚える。「ASMR」の場合はそれと似たようなことを何もしなくても勝手にやってくれる感覚で、ヘッドスパ(炭酸含む)の体験も似たようなものだ。

最近は特にこの「脳タッピング」がお気に入り。

ただし「氷の咀嚼音」、お前だけは許さないからな。

《Blood and Needle in a Small Bottle Surrounded by Screws》

「箱庭」の入れ子構造

ここからは作品の話に移行する。<血>、<針>、<小瓶>、<捻子>。《Blood and Needle in a Small Bottle Surrounded by Screws》で使用されているそれらのモチーフは、いずれもV系的な要素を持っており、このジャンルにおいてはクリシェに近い表象である。そもそも「標本箱」というアイディア自体が「箱庭」的な有限で限定された空間を支配したいという欲望に貫かれているが、その「標本箱」に区切りを入れた上で、さらに<小瓶>の中に「箱庭」を作るという入れ子構造がここには構築されている。しかもその「箱庭」は<血>と<針>という痛覚を知覚させる素材で満たされており、それらは<捻子>という固定するための物質によって封印されている。つまりここでは「フェティシズム」とその封印が表現されているとも言える。

V系的なクリシェを集めた標本箱

元々のアイディアとしてはBvlgari Manのミニボトルの中身を<血>を入れ替え、レジンで固めるというものだった。しかし、瓶の密封が上手くいかずに水分と空気に反応して失敗してしまった。これは見た目的には中々面白いものだったので、とても残念。その代わりに瓶の形が気に入ったBvlgari Blackを購入して再度試そうとしたものの、箱のスペースにぎりぎり入らなかったために諦めた。試行錯誤の段階で購入したのに使用しない素材が出ると購入費が痛いが、これに関しては普通に日常生活で使用することにした。結果としては「ブランド的な商業主義は<血>で満たされおり、それは痛みを伴うが美しい」というタイプのコンセプトから、より自分の内面に近いコンセプトに移行したので良かった。それにしても「V系的なクリシェを集めた標本箱」というのは「フェティシズム」と興味をそそられるテーマであり、それを主題にした作品もいつか作ってみたいと思った。

個展プランをつくる: 連載記事リンク

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個展プランをつくる 2: 《QR Code in Resin》

個展プランをつくる 3: 《Magnets and Ironsand in Resin》

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個展プランをつくる 5: 《Blood and Needle in a Small Bottle Surrounded by Screws》

個展プランをつくる 6: 《Fragments of a CD in a Small Bottle and Seaweed in a Light Bulb Surrounded by Dry Flowers》

個展プランをつくる 7: 《Assemblage in Resin》

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