個展プランをつくる 4: 《Flower on Starfish》

キメラについて

キメラ(動物と植物)/雑種

キメラは現在では動物のイメージが強いが、元々植物でも使われていた言葉が動物に適用された言葉である(動物の場合は類似概念にモザイクがある)。例えば動物で言えばギリシア神話のキマイラがキメラの由来になっているが、実際には不完全ながらも(免疫系に拒絶反応が起き、最終的には死に至る)ニワトリとウズラのキメラは存在している。一方で植物で言えば「接木キメラ」はキメラの一種であり、異なる遺伝情報が接ぎ木の接触点に混在することになる。またキメラは雑種と混同されやすいが、両者は定義上違う個体を指す。具体的にはキメラはあくまで同一個体の中に遺伝子の異なる細胞が混在しているが、雑種は細胞内の遺伝子が混じり合っているためにどの細胞を取り上げても同一の遺伝子のセットが入っているという違いがある。ちなみに雑種の例としてはライガー(父: ライオン、母: トラ)やラバ(父: ロバ、母: ウマ)などが挙げられる。

幻想標本と透明標本

ここで突然告白しておくと、江本創の幻想標本が好きだ。以下の幻想標本博物館では彼の幻想世界の住人としてのキメラに対する愛情が見て取れる。

幻想標本博物館: 江本創の世界

モモンガガエル、サイガメ、魚人間、四脚鳥、テガニ、ウミウマ

これらの生物はもちろん架空の存在であるが、同時にキメラそのものでもある。個人的には透明標本も好きなので、透明幻想標本があったら素敵だなと思うのだが、中々実現が難しいものなのだろうか。しかしこれらは幻想や透明であることもさることながら、標本という存在自体がフェティシズム的な欲望を刺激してくる。また別の観点から言えば今のメディアアート、バイオアートの発展を見ていると、幻想標本や透明標本に対して別のアプローチも取れそうな気もする。

《Flower on Starfish》

《Flower on Starfish》では、海岸で良く見かけるヒトデと散歩中に拾った花をキメラのように接続してみることにした。この試みは子どもの言葉遊びやままごとの延長線上にあるが、このように大人がその言葉遊びやままごとに真剣に興じてみること、もしくは科学的な想像力を科学とは全く違った場で使用することにアートの最初の萌芽がある。動物と植物のキメラというのはSF的な響きがあるが、この試みでは遺伝子とは無関係に瞬間接着剤を使用して接続しているので厳密に言えばキメラとは無関係である。にもかかわらずそのような接続には何かしらの想像力が刺激されるように思う。現代ではPhotoshopなどのツールを使用することで、2次元的に<視覚的なキメラ>を作り出すことは容易であるが、そもそもコラージュの発想の原点もキメラ的な想像力に支えられていると言える。そして今回のように接着剤を使用するだけで、3次元的に<視覚的なキメラ>を作り出すこともまた容易なことであり、VRや3Dプリンタなどの発展により3次元的に<視覚的なキメラ>の存在も身近になってきている。物理的なキメラと情報的なキメラ、キメラについて知れば知るほどそれは「弱さの象徴」であるように思えるが、異質なものを排除することは生き延びる上での生物的な最適解だったのかもしれない。

個展プランをつくる: 連載記事リンク

個展プランをつくる 1: 《Chain in Resin》

個展プランをつくる 2: 《QR Code in Resin》

個展プランをつくる 3: 《Magnets and Ironsand in Resin》

個展プランをつくる 4: 《Flower on Starfish》

個展プランをつくる 5: 《Blood and Needle in a Small Bottle Surrounded by Screws》

個展プランをつくる 6: 《Fragments of a CD in a Small Bottle and Seaweed in a Light Bulb Surrounded by Dry Flowers》

個展プランをつくる 7: 《Assemblage in Resin》

個展プランをつくる 8: 《A Specimen Box as a Self-Portrait》