QRコード
開発/普及/化石
QRコードはいつか化石になるだろうか。
QRコードは元々日本のデンソーが開発したものだが、現在は日本よりも中国で爆発的な普及率を誇っている。理由としては決済手段として日本では現金決済が未だに主流である一方で、中国ではWeChatやアリペイと連携したQRコード決済が主流となっていることが挙げられる。開発と普及は同一のプロセスではないので、このように思わぬ場所で思わぬ普及の仕方をするという例は枚挙に暇がない。そういう意味である場所では化石と化したものが、ある場所では現役で活躍するということはあり得るし、QRコードが情報技術である以上どこかの未来の時点で完全に化石になる日が来る可能性はあるだろう。世界中の化石と化した大量のQRコード群(ゾンビQRコード)の中から、リンク切れではないQRコードを探し出し、スキャンすることで未来人が過去のデータを発掘するみたいな風景が一瞬脳裏をよぎったが、その時代には物質と情報を接続することが当たり前過ぎて、既にスキャンという意識すら消失していそうな気がする。
可変QR
ところでQRコードは自分で作成することが可能だが、その方法はツールを使用すれば至って単純である。最近は作品でQRコードを使用することが度々あったので、その時には以下の可変QRというサービスを使用していた。
このサービスを使用するとQRコードを作成した後にリンク先のURLを変更したくなった際に、簡単に対応できる可変的なQRコードを作成することができる。
QRコードを作品に使用する際には、大抵音楽、映像、画像などのリンクに飛ばすようにしているのだが、このサービスを使用すれば後に気分が変わったり、対応させる情報を変えたいという場合に対応可能なので便利だ。ただし将来的にこのサービスが停止する可能性はあるので、その場合は自己責任で使用するか、契約期間の保証がある有料版を使用するべきかもしれない。
《QR Code in Resin》
そんなQRコードを化石のようにレジンの中に閉じ込めてみたいという欲望が芽生えたので、早速実行してみた。QRコードを単純に紙に印刷してしまうとレジンの透明感が薄れてしまうので、QRコードの印刷にはOHPフィルムという透明なフィルムを使用した。これは過去作品でレイヤー構造を表現するために、OHPフィルムを使用してイメージを重ねたことの応用でもある。一度半分程度で硬化させ、QRコードを印刷したOHPフィルムを配置し、もう一度樹脂と硬化剤などを注ぎ込んで硬化させる。ここで分量の微妙な差異により最初の層と2番目の層の色が変わってしまうなどの失敗を重ねつつも、一番透明感のあるものを選んだ。これを大量に制作して部屋にばらまくなどしてみたい気分にもなったが、趣旨とずれるのでその欲望を抑圧しつつひとまず《QR Code in Resin》は完成した。
もしタイムマシーンで過去に行くことができるなら、これをアルタミラ洞窟壁画が描かれた辺りの時代に大量にばらまいて世界線変動率がどの程度ずれるのかを観測してみたいが、残念ながら私たちは未来に進むことしかできない。
個展プランをつくる: 連載記事リンク
個展プランをつくる 2: 《QR Code in Resin》
個展プランをつくる 3: 《Magnets and Ironsand in Resin》
個展プランをつくる 4: 《Flower on Starfish》
個展プランをつくる 5: 《Blood and Needle in a Small Bottle Surrounded by Screws》