個展プランをつくる
新芸術校で個展プランをつくるという課題が出た。具体的には以下の三つに取り組んだので、今回の記事からその経緯を連載記事としてまとめてみる。
1. 個展のコンセプト
2. 展示構成のビジュアル
3. メインの作品
1と2については後回しにするとして、今回の記事からは主に3のメインの作品についてできあがった部分から紹介していく。
「鎖」
思えば全ては「鎖」から始まった。
「The Chain Room」
話は2009年に自宅の自室で行われた個展、「The Chain Room」にまで遡る。その個展は当時引きこもっていた部屋を「Danger Keep Out」の黄色いテープで封鎖し、使っていた机と椅子を天井に張り巡らせた「鎖」で雁字搦めにして吊り下げた作品「思考」をメインとしたものだった。当時は「現代美術って何だか美味しそうだな」くらいのノリで、一応作品と呼べるようなものを作るのも、まとめて展示するのも初めてだった。引きこもりなので当然宣伝することも人を自室に招くこともなく、両親がチラ見したという実績が観客としてカウントできるかどうかの瀬戸際みたいな感じだった。それから美大に入ったり、辞めたり、アメリカの大学に編入したり色々あった。そしてアイルランドで展示を行った際も「鎖」を自分のスペースに張り巡らせ、パフォーマンスで髪をハサミで切り刻み、叫びながら作品ごとぶち壊し、ガスマスクを装着してランプを灯して外へ歩き出すみたいなことをして、アートを知らない一般人が感動して泣きながら抱きついてくるみたいなことがあった。
《Chain in Resin》
そして今、こうしてまた「鎖」と向き合っている。
縛られたいのか、解放されたいのか。マゾなのか、サドなのか。
恐らく両方なのだろう。それらの欲望が同時に存在していることは決して矛盾しない。そんな象徴的な「鎖」をレジンで閉じ込めてみる。防塵マスクとゴーグルを装着し、シリコンフレックスにエポキシ樹脂と硬化剤と硬化促進剤を混合した液体を注ぎ込む。閉じられた世界が無機的に硬化していき、それを美しいと思う。それにしてもこのレジンの高価さは何とかならないものか。数メートルや数十メートル単位で硬化できればもっと面白いものが作れそうに思うのだが、今は数センチ単位で限界だ。こうして「雁字搦めさ」が閉じ込められた透明なレジンを眺めながら、原点回帰の輪廻を繰り返していく。それが制作と呼ばれる行為なのだろう。
個展プランをつくる: 連載記事リンク
個展プランをつくる 2: 《QR Code in Resin》
個展プランをつくる 3: 《Magnets and Ironsand in Resin》
個展プランをつくる 4: 《Flower on Starfish》
個展プランをつくる 5: 《Blood and Needle in a Small Bottle Surrounded by Screws》