しりとりの修行を積んでみた

しりとりの修行

しりとりは奥が深い。しりとりが言語に依存することは言うまでもないが、そこには幾つかのルールと戦略のバリエーションが存在している。一番有名なルールは「ん」が付くと負けというものだが、実際には「ん」の付く言葉は皆無ではないので高度なルールでは「ん」の使用が許可されることもある。ここでしりとりのエッセンスを取り出すと、「言語空間と知識の制約を受けながら、言葉を紡ぎ出す連想ゲーム」ということになる。しかししりとりにとって重要なのはあくまで表面上の言葉であって、意味は完全に置き去りにされているということだ。ソシュール言語学で言うならば、シニフィアンが重要なのであってシニフィエは問われない。よってしりとりにおいては、その無意味な文字の連なり、突飛な連想ゲームが最終的に塊として出現することになる。そこでその塊は何かを示すことになるのかもしれず、そのことを検証するために今回はしりとりの修行として一人しりとりを異なる方法でやってみたいと思う。

100回しりとり

実演

しりとり → 陸上競技 → 擬態 → 板 → 体力測定 → インノケンティウス3世 → イタチ → チリ → 林檎 → ゴーストライター → 魂 → 椅子 → 水泳 → イスタンブール → ルミノール → ルール → ルクセンブルク → 鯨 → ライチ☆光クラブ → ブール関数 → 宇宙 → 鰻 → 餃子 → ザクロ → ロックンロール → ルービックキューブ → ブラジル → ルンバ → バミリ → 理化学研究所 → ヨーロッパ → パセリ → リュウグウノツカイ → インポテンツ → ツインビー → ビール → 流刑 → イチジク → 熊手 → 出口 → 地球 → 鬱血 → 津軽海峡 → 烏骨鶏 → イッテルビウム → ムー → 村 → 落雷 → イチョウ → 運動会 → インフルエンザ → 財務省 → 牛久 → 国木田独歩 → ポカホンタス → スマイリーキクチ → チャルメラ → 落花生 → イリジウム → 骸 → ろくろ首 → ビット → とんねるず → ズーラシア大陸 → 工藤新一 → 血 → 秩序 → 洋室 → 積み木 → キュウリ → リーマンショック → 空海 → インド → ドイツ → ツンドラ気候 → 馬 → マイクロメートル → ルイジアナ州 → 雲梯 → 命 → 超能力 → 苦海浄土 → 土木 → 苦行 → ウーマンラッシュアワー → ワニ → 虹 → 地雷 → 伊能忠敬 → 海上保安庁 → 浦島太郎 → うたた寝 → ネバーランド → ドリーム・シアター → 短冊 → クトゥルフ神話 → ワンダと巨像 → うちなーぐち。

分析

まず100回しりとりをやってみた。ルールとしては「ん」を付けることなく、単純に100回しりとりを繰り返すことができれば成功。やはり1人でやっている分、自分の知識や好みの傾向、偏りが出てくる。また「インノケンティウス3世」については、「インノケンティウスループ」というテクニックがある。これは何かと言えば、インノケンティウスは3世が特に有名だが、実際には1世〜13世まで存在しているので、「い」の付く言葉が来た時には13回これらの「インノケンティウスストック」を使用することが可能になる。欠点としてはその戦略がばれた時点で「インノケンティウスループ」が禁止される可能性があることと、「インノケンティウスループ」においては最後が「い」になるので、相手も同様にそのテクニックを使用してくることで、一気に「インノケンティウスストック」が消費されてしまう可能性があることだ。他には元素記号を覚えておくと有利なことと、「る」攻めの中でも特に「る」で開始して「る」で終わる「ルール」、「ルミノール」などは覚えておくと良い。個人的には地球 → 鬱血 → 津軽海峡 → 烏骨鶏 → イッテルビウムの流れが好き。

文字数増加しりとり

実演 (日本語)

絵 → エイ → イチゴ → ゴミ箱 → コカコーラ → ラウドロック → クロネコヤマト → 冬虫夏草 → ウクライナ航空 → ウッチャソナソチャソ → 総合人間学部 → 文豪ストレイドッグス → スマトラオオヒラタクワガタ → 大日本帝国憲法 → 宇宙戦艦ヤマトシリーズ。

実演 (英語)

I → it → toy → yell → light → tripod → darling → Gregoria → Arlington → navigation → nationality → youthfulness → sexualization → neurobiologist → troubleshooting.

分析

次に文字数増加しりとりを日本語と英語でやってみた。日本語に関しては濁点の使用や、〜シリーズの使用など際どいところもあるが、15文字が限界だった。英語に関しては初めての試みなのでやり方に戸惑い、動詞や形容詞を挙げたくなるところを我慢して名詞で頑張ったものの、こちらも15文字が限界だった。ただ単にそれらより長い単語なら思い付かないこともないのだが、しりとりという連なりの制約上難しいものがある。振り返ってみると特に日本語では「う」攻めで自爆し、英語では「n」攻めで自爆するなど勝手にどつぼにはまっていく過程が垣間見える。実演してみた結果、100回しりとりよりも文字数増加しりとりの方がシビアであり、特に最後の文字を何で終わるかが後の命運を分ける可能性がより高くなる印象を受けた

今回の記事のまとめ

今回の記事ではしりとりの修行ということで、100回しりとりと文字数増加しりとりを実演し、後に分析してみた。現代においては言葉や知識の重要性が相対的に低くなってきていることは確かであり、特に内容や意味を伴わない単語の羅列は人間の得意な領域でないことは確かだろう。しかし一方で自分の脳内の内蔵HDDに言葉や知識があることの重要性は変わらず存在している。それはつまり自分が使える画材が手元にあるということであり、また世界の解像度はそれらに依存するということであり、Google検索に入れる単語をそもそも知っていなければならないという問題への対処方法でもある。他にも連想で連なる単語から描ける想像力というものも存在している気がした。Wikipediaが存在している今、百科事典や辞典の意味も失われつつあるわけだが、一方でまとまった読み物として考えるならば、むしろそれらを今読んでみるのも面白いのかもしれない。