完璧主義の弊害に対する治療法

スロースターターとボトルネック

今回の記事では完璧主義の弊害をテーマに、その治療法を含めて書いてみる。まず完璧主義の弊害の一つに、スロースターターというものが挙げられる。これが何故起こってしまうのかといえば、完璧主義な人は一度その物事に取り組むと、最終的に完璧に仕上げるまでにどれだけの時間と労力が必要なのかを潜在的に見積もってしまうために、中々取り組む気にならないということがある。またそのハードルを乗り越えて一旦取り組んだとしても、二つ先の物事をやるために一つ先の物事がボトルネックになっていることは良くある。そういったボトルネックが複数存在する場合、そのボトルネックの作業に必要以上に拘り、結局その先の全ての作業がストップしてしまうということがある。例えば油絵を描くためにはそのための画材が必要だ。そして画材には様々な種類とクオリティの差があり、どの画材が良いのかというリサーチを徹底的にしてしまうと、絵を描くという作業が先延ばしになるし、それだけで疲れてしまう。制作においては追い詰められれば追い詰められるほど火事場の馬鹿力的に良い作品が生まれてしまうという可能性は常にあり、そういったものに対する無意識の選択が働いてしまっている可能性もある。しかし基本的にはこういった準備に関する寄り道やスロースターターでいるよりも、24/7アトリエで生活/制作するような意識と手の動かしを止めない方が素早く成長する。なのでそうしないための言い訳になるならば、これは完璧主義の弊害ということになる。

ブリコラージュ的な発想

ではそんな状態を解消するためには何をすればいいかと言えば、一つはブリコラージュ的な発想を投入すること。ブリコラージュとは「身近にある物の寄せ集めで完成させる」という意味があり、これは日曜大工的な発想の延長線上にある。完璧主義的のシステムがトップダウン的な発想だとするならば、ブリコラージュ的なシステムはボトムアップ的に手を動かしながら考えるという発想になる。究極的にはトップダウン的な発想とボトムアップ的な発想は同時並列的に起こっているのが理想であり、様々な角度のコンセプトを考慮しつつも、手を動かしながら最適化を図るのが理想である。しかし完璧主義の傾向が強い人はトップダウン的に物事を考え過ぎる傾向にあり、その傾向が強すぎると何も完成させることができずに、時間だけが経過してしまうという状態になりかねない。それに対してブリコラージュ的な発想は、完璧主義の弊害に対する治療法として有効に機能する。

マイルストーンの組み合わせ

他にもマイルストーン的に小さく分割した目標を設定し、それに沿って動く、もしくは異なるマイルストーン同士を組み合わせるというのもありだ。例えば掃除に関しては、一度取り組み始めると徹底的に綺麗にしないと満足しないために、むしろ日常的に部屋を汚くしてしまうということはあり得る。それに対処するためには、ある程度のところまでやって、途中で止めるという考え方が必要である。そのためには異なる小さなマイルストーン同士を組み合わせることが有効に機能する。具体的には部屋が汚いので、制作に必要なハサミが見付からないという状況があったとする。その場合はハサミが見付かるまで、部屋の掃除を続けるというマイルストーンの組み合わせを設定してみる。するとハサミを見付けるという小さな目標と、部屋を掃除するという小さな目標が重なり合い、一石二鳥の状態を作ることができる。しかも一つ一つのタスクは労力が小さいので、取り組みやすいというメリットもある。これによって汚い部屋で延々とハサミを探し続けるという不毛な労力と、部屋を完璧に片付けなければならないという不毛なストレスから解放され、両方を効率良く行いながら目標を達成することができる。この目標を小さく分割し、組み合わせるという発想、途中で止めるという切断、適当であるという自由さは完璧主義に効く薬である。

負けず嫌いという成長の阻害要因

最後に完璧主義に付随しがちな性質である、負けず嫌いについて。これは例えばスコアに関して一度でも負けたら全てを無にするためにリセットしたい、自分の技術がある程度上がるまでは人前で一切見せたくないなどの心情/態度と深い関わりがある。こういった心情/態度は実は物事を学習するためには一番有害かつ非効率的なものだ。自分が全くできない状態で上級者たちが群がっている場に食らい付き、最初は笑われながらも上を目指していく姿勢というものが学習にとっては必要であり、最終的には一番成長が早い。成長にとっては別に何回負けたっていいし、何度失敗してもいいから最終的にそこに到達するという根拠のない自信と、場違いな中でその現場に居続け、物事に取り組み続けることが最も重要なファクターだ。もちろん完璧主義で負けず嫌いであるという性質は悪いことばかりではなく、そういった性質があるから常人には考えられないレベルに到達している人は沢山いる。なので大事なのはそれらの性質を無理に変えようとするのではなく、むしろメリットとデメリットを客観的に認識し、いかにメリットを活かしつつデメリットを武器に変えていくかという発想の転換にあるのだ。