「ICO」と「仮想通貨」: 全世界的な規制強化と今後の流れ

「ICO」に対する全世界的な規制強化

先日中国が「ICO」を禁止し、仮想通貨取引所を当面閉鎖することを発表した。アメリカでは既にアメリカ証券取引委員会 (SEC) が「ICO」の規制を発表しており、シンガポールでもその後を追うようにシンガポール金融管理局 (MAS) によって「ICO」に対する規制が発表されていた。これによって全世界的な潮流として「ICO」に対する規制強化の方向は決定付けられたと言って良く、その影響は日本にも及ぶものと思われる。そもそも以前も何度か取り上げた「ICO」とは簡単に言えば仮想通貨としてトークンやコインを新規に発行して資金調達を行うことを指し、株式で言えば「IPO」に該当するものだ。今回はこの「ICO」と「仮想通貨」というテーマで最近の話題をまとめた上で、今後の展開を予想してみたい。

「ICO」は何を生み出したか?

詐欺と破綻

時に数十秒で数十億、数時間で数百億もの資金調達を行うこともある「ICO」だが、今のところ「ICO」は何を生み出したのか?実際にはほとんど何も生み出していない。「10億集めたICOが何もプロダクトをローンチできない理由」という記事を参照すると、ICOで資金調達に成功したプロジェクトのうち、半数以上はプロダクトが存在せず、一定の成功を収めているプロジェクトは全体の6.25%になっている。また「ICO」によって発行されるトークンやコインは詐欺の温床と言われており、どの「ICO」が詐欺かどうかは事前に見抜くことが極めて難しい。例えば「ノアコイン」や「Dircoin」はほぼ詐欺であることが確定しており、詐欺ではなかったとしても取引が成り立たずに破綻してしまう仮想通貨も数多くある。

超投機市場

では何故このような状況で「ICO」が盛り上がっていたかと言えば、「投資」よりも「投機」が好きな人が多いからだ。「ICO」に参加しているような人々は「ICO」がバブルであることは分かりきっており、バブルが弾ける前に自分だけが売り抜けるというババ抜きのゲームになっている。ほとんどの人は「ICO」のプロジェクトやプロダクトに興味があるわけではなく、ただ仮想通貨の価格が上がるか下がるかに興味があるだけだ。つまり彼らは短期的なキャピタルゲインを狙っているわけだ。そのキャピタルゲインを狙うためには一定数のカモが必要であり、その市場を盛り上げるために一般層を煽りに煽っているというのが本当のところだ。「ICO」の中には本当に未来を見据えてイノベーションを起こすようなものも含まれている可能性はあるが、先行の発行者が散々儲けた後はほとんどが規制強化や詐欺によって消えていくことになる。つまり現代は未来から見れば「ドットコムバブル」と同じく、「ICO」バブルであり、将来的にはそのように記述されるようになるだろう。

日本における「ICO」
「COMSA」とは

日本における「ICO」で今一番注目を浴びているのは「COMSA」だろう。「COMSA」については一般的な「ICO」とは異なり、「ICO」のためのプラットフォームと考えると分かり易い。簡単に流れを説明すると、最初にまず「COMSA」自体の「ICO」=「トークンセール」が行われ、参加する人は「COMSAトークン (CMS)」を購入することになる。「トークンセール」の期間は発行上限がないが、期限を過ぎるとそれと同数のトークンが発行され、総発行数がロックされる。その追加発行されたトークンのうち10パーセントが紹介者、50%がテックビューロ経営陣、ステークホルダー、開発者、従業員、契約社員、COMSA ICO協議会運営、40%がテックビューロの持ち分となる。つまり「トークンセール」後の「COMSAトークン (CMS)」の配分を改めて整理すると以下のようになる。

55%: トークンセール参加者/紹介者
25%: テックビューロ経営陣、ステークホルダー、開発者、従業員、契約社員、COMSA ICO協議会運営
20%: テックビューロ

トークンセール参加者に関しては購入したトークンの発行量がいきなり倍になる、つまり価値が半減することになる。またトークン全体の45%はトークンセールに参加しない人々の懐に入ることになる。要するにこれは胴元ビジネスの基本に忠実なシステムであることが分かる。ただ「COMSAトークン (CMS)」を保持する人には「2号案件以降のICOでの払込みに使用することによる、5%以上の追加プレミアムボーナス」と「今後のICO案件において特別なクローズドのプレセールへ招待される特権」が得られるらしい。2号案件と3号案件の予定は既に決まっており、「プレミアムウォーターホールディングス」と「CAMPFIRE」がそれぞれ「ICO」を行うことになっている。ただこの特典が「COMSAトークン (CMS)」を購入するだけの価値の担保になっているかどうかは良く考えた方が良い。また「COMSA」は錚々たるメンバーで固めてきているが、それと「COMSA」が評価に値するかは全く別の話だ。

「仮想通貨」の推移

「ビットコイン」を含んだ「仮想通貨」については以前「仮想通貨バブルとフィンテックバブル 前編: ビットコインとブロックチェーンの仕組み」「仮想通貨バブルとフィンテックバブル 中編: 仮想通貨バブル」「仮想通貨バブルとフィンテックバブル 後編: フィンテックバブル」という連載記事で詳しく書いたのでそちらを参照してほしい。これらの記事は「ビットコイン」の規格分裂前に書かれたものであり、実際に「ビットコイン」は規格分裂して「ビットコイン」と「ビットコインキャッシュ」に分かれた。これが証明したのは「ビットコイン」はもはや完全な非中央集権システムではないということ。また発行上限を設定していても今後もハードフォークのような倍々ゲームを繰り返した先には「チューリップバブル」が待っている。

日本人の「ビットコイン」愛は鴨ねぎ

驚くべきことに現在「ビットコイン」の取引量は日本円でのものが世界一になっている。これは必ずしも日本人が取引しているとは限らないが、普通に考えるならば日本人も大量に取引していると考えて良いだろう。また落合陽一の言うように恐怖指数と「ビットコイン」の価格上昇が連動しているという説には信憑性がある。世界的な潮流としては今売り抜けるためのタイミングを調整している段階なので、今の段階で買い支えている日本人はつまり鴨ねぎである可能性が高いと言える。個人的には非中央集権システム、発行上限、ハードフォーク、開発者コミュニティの持続可能性などを考えると、「ビットコイン」がこの局面を乗り切れるかどうかには懐疑的。というより「ビットコイン」の理念より投機として購入していた層にとっては、次に述べるような致命的な税制の締め付けが既にできてしまった。

「仮想通貨」は「雑所得」

「仮想通貨」の税制に関して専門家の間でも長い間謎であったのだが、国税庁が一つの答えを出した。それが以下になる。

「No.1524 ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係」

この税制が将来的に変更される可能性はあるが、少なくとも今後しばらくの間この税制は動かないだろう。というよりこの税制を動かすためには非中央集権を標榜する「仮想通貨」界隈が団結する必要があるが、もはやその場合は非中央集権とは何だったのかという話になる。結局法律による規制強化や税制という出口を締め上げられた場合、非中央集権の理念は一撃で吹き飛ぶ。話を税制に戻すと、この税制の下では投機的な層のモチベーションはほとんど死んだも同然になる。何故なら「株」や「FX」は「分離課税」により税率は一律20%であり、3年間の損失の繰り越しなどの優遇があるが、「仮想通貨」に関しては「雑所得」であり、「所得税」がかかることになる。「所得税」は「累進課税」であり、その最高税率は45%。これに関しては損失に対する救済措置はない。この税制において「ビットコイン」や「アルトコイン」などのリスクとボラリティの高いものに投機していくモチベーションはほとんど消えたと言ってもいいだろう。つまりバブルは弾ける。

「ICO」と「仮想通貨」の今後の展望

「ICO」と「仮想通貨」に対しては世界的に国家が規制強化の舵を切ってきた。今までは「ICO」や「仮想通貨」は溢れ出てきて止まらない状況であったが、これからは淘汰されるスピードがますます増加していくだろう。規制が極端に緩く、投資家保護が存在しない市場を一般に開放したらどうなるかは既に「VALU」が証明した。「VALU」については「ICO」とは異なるものの、規制強化の流れを考えると「ICO」と類似した流れを辿るだろう。「COMSA」に関しても現状胴元ビジネスの感が拭えず、この世界的な「ICO」の潮流が「COMSA」にどういう影響を与えるかは注目に値する。「仮想通貨」に関しては個人的には以前話したような「MUFGコイン」や国家が発行する法定通貨 (フィアット) のような仮想通貨 (ex. 円コイン、日本コイン) などの中央集権の裏付けがあるものが最終的に流行すると思っている。一つだけ確かなことは「ICO」と「仮想通貨」に関しては投機ではなく、投資として、さらに言えば投資は余剰資金で行うという基本原則を守りさえすればこの先何が起ころうとも困ることはない。たとえ現状の「ICO」と「仮想通貨」に投機以外の使い道がなかったとしても。

追記

JPモルガンCEOであるジェイミー・ダイモンによる「ビットコインは詐欺」発言によって一時的にビットコインが暴落したが、その発言の後にこれは売り煽りであって、実際はJPモルガンが大量にビットコインを買っていたという発言がSNSを賑わしていた。それに関して日本における仮想通貨取引所のトップや有名なインフルエンサーたちなども支持するような発言をしていたのには率直に言って非常に驚いた。つまり仮想通貨界隈はトップ層を含めて全く金融に関するリテラシーがないことが証明された。この場合客の仲介で買っているのか自己売買で買っているのかは判別が付かないにも関わらず、後者で買っているというような断定が目立った。これは普通に考えて前者の立場で買っていると見るのが自然。金融業界のトップが後者の立場でポジショントークをして人々を騙し、自分の発言の信頼性を捨ててまで小金稼ぎををするはずがない。恐らくは既存の金融業界/銀行などは古い勢力、仮想通貨界隈は新しい勢力として単純な二項対立を作り、前者はこれから終わっていくから抵抗していて、後者はそれに騙されることなくガンガンいけば良いというような単純な思考が蔓延している気がするが、そういった単純化された思考こそがチューリップバブルの根拠であることを忘れてはいけない。

またCOMSAのICO案件について。ホワイトペーパーから引用すると以下の記述がある。

本プロジェクトはCOMSA自身が第一号のICO案件として始動し、そのセール完了直後の2017年終
盤から、以下のICO案件の実施が既に確定している。
1. 株式会社プレミアムウォーターホールディングス(東証二部:2588)。
2. 株式会社CAMPFIRE – 日本最大のクラウドファンディングサービス -。

これを読むと「確定」と書いてあったICO案件だが、2号案件である「プレミアムウォーターホールディングス」については検討中に変更、「CAMPFIRE」については中止が決定した。後者については「テックビューロ」と「CAMPFIRE」の見解に相違があるが、「CAMPFIRE」の主張における時系列が正しいとするならば、9月14日には既に問題が表面化していることになる。10万ドル以上を対象にした「COMSA プレセール」は既に9月11日〜9月20日まで開催済みであり、この事実を10月2日〜11月6日まで開催予定の「COMSAトークンセール」の直前まで発表しなかったという事実は投資家に対して不都合な事実を隠蔽していたと言われても仕方がない。さらに自社以外のICO案件が実質上消滅している状態で「COMSAトークンセール」がそのまま行われているという状況も異常である。COMSAの動向によって今後の日本におけるICOの法規制含めて様々な影響が出てくるはずなので、今回の件はICOの信頼性に関して既にかなりの痛手を与えたことになる。今後「COMSA」を含めたICOが日本でどうなるかは不確定な部分もあるが、個人的な見通しは暗い。

COMSAにおけるCAMPFIRE社のICOの中止の経緯について

2017年10月2日付け株式会社CAMPFIREによる『COMSAに関する一連の経緯につきまして』と題するリリースについて、及び、今後の弊社の対応について

COMSAに関する一連の経緯につきまして 株式会社CAMPFIRE 2017年10月2日